管理職の「罰ゲーム化」 ②
(前回からの続きです)
2.人事として今すぐ打つべき3つの打ち手
では、人事は具体的に何から着手すべきでしょうか。実務上、優先度の高い施策を3つ挙げてみます。
打ち手① 管理職の役割の再定義
まず着手すべきは、管理職に「何を」「どこまで」求めるのかを明確にすることです。多くの企業では、管理職の期待役割が整理されていません。特に中小企業においては、管理職としてのロールモデルが不在であったり、新任管理者への教育が不十分であったりしますので、悪い意味で制限をかけられない例が多くあります。
・マネジメント領域の区分、定義、期待成果の明確化
・プレイヤー業務の上限設定と、適切な権限移譲
・上記について、評価制度への落とし込み
などを通じて、役割の解像度を高めることが不可欠です。
管理職は経営と一体的に…と言いたい気持ちもよくわかりますが、取締役として役員報酬をもらう立場と、社員としてサラリーをもらう立場は、やはり違います。将来的に期待するのは構いませんが、まずは管理職としての仕事がしっかりできるようサポートしてください。
やることさえ明確になれば、適切な目標設定を行い、タスクとして落とし込める管理職は多いと感じます。最初の打ち手として取り組んでください。
打ち手② 報酬制度の再設計
次に必要なのが、報酬水準および報酬制度の再設計です。
報酬水準としては前述の通り、課長1000万円、部長1300万円まで引き上げられれば理想ですが、許容人件費としての枠もありますので、まずは段階的な引き上げプランを作成するのがよいでしょう。
報酬制度については、各社色々な考え方があると思いますので、あくまで参考程度に下記を確認してみてください。
・管理監督者だから残業代や家族手当の支給対象外、でよいのか?
:本来、年収水準が高いことを前提に細かな手当を支給しない、という意味合いだと筆者は認識しています。ところが、基本給は多少上がるものの、諸手当がなくなり、係長として残業している時の方が年収がよかった、といった例はよく見かけます。よくよく考えると、管理職になると家族手当が支給されない、というのも意味が通りません。世間一般ではなく、自社のポリシーを改めて確認して賃金を構成したいものです。
・成果が上がれば報酬を上げる、ではなく、報酬を上げて成果を期待する、というポリシーで運用できないか?
:成果を出せば報酬を上げる。これは、会社側がリスクを負っていないことを意味します。人件費を「費用」ではなく「投資」と考えられれば、管理職のエンゲージメントやモチベーションも上がるはずです。経営活動として、我々は様々なものに投資をしていますので、人件費もその一つとして考えたいものです。
・非金銭的報酬は十分か?
:「管理職はこちら側(会社側)の人間」と言ってしまう経営陣をよく見かけます。その意識に立ってしまうと、管理職の様々な業務を「やって当たり前」と考えてしまいます。しかし、先ほど述べたように、やはり立場は違います。若手社員への対応と同じように、一定の承認活動が必要です。管理職を対象とした表彰制度を設けるなど、報酬制度でも一工夫したいものです。
打ち手③ 次世代管理職の計画的育成
最後はやはり、管理職予備軍の早期発掘と育成です。数行で表現するのは難しいですので、ポイントのみの紹介となります。
・適性のある人材の早期発見
・育成会議の実施
:営業に関する会議は多く存在するものの、人材育成や組織作りに関する会議体はほとんど見かけません。定期的に実施することで、候補者の選定と、候補者に対する仕事の与え方を工夫でき、成長を鈍化させないという効果が期待できます。
・5年後・10年後の組織図を描いてみる
:要職者のポストが埋められそうかどうか、具体的にイメージするのに最適です。単なる要員計画では見えてこない課題や、逆に配置のアイデアが生まれたりします。
3.管理職の“勝ちポジ化”は人事の最優先マター
管理職の罰ゲーム化を放置すれば、
・部下マネジメント力の弱体化
・意思決定スピードの鈍化による現場力の低下
・これらに起因したエンゲージメント低下による離職増加
・管理職候補者の更なる枯渇
といった問題が生じます。
特に日本企業では、中間管理職が組織の連結ピンとなっているケースが多く、その弱体化は確実に組織力を蝕みます。
中途採用で補充すればいい、という意見もあるかもしれませんが、本当に優秀な人材は、それなりの報酬水準が必要となります。また、前職の環境(ブランド、システム、優秀な部下 等)があったからこそ成果を出せていたが、違う環境になると苦戦してしまう、という例も多く見てきました。
管理職改革は、単発の施策では完結しない、組織設計そのものを見直す必要のある大きなテーマです。早期に着手できるかどうかが、今後の組織競争力を左右すると言えるでしょう。
「管理職になれば、その後のビジネス人生はイージーモード」と若手・中堅社員が思えることを目標に、必要なリソースを割きたいものです。
