人事制度コラム

人事制度ホーム > 人事制度コラム > 人事制度全般 > 等級ランクを分けられない!と感じたときの考え方

人事制度コラム

等級ランクを分けられない!と感じたときの考え方

人事制度を構築・改定する際に検討を欠かせないのが、土台となる等級制度です。等級制度の検討にあたっては、等級をどのような要素(能力・役割・職務)で定義するのか、専門職といった複線型の仕組みとするのか、等の検討論点がありますが、本稿では等級ランク数の設定について触れていきたいと思います。

 

等級ランク数の設定においては、「言語化可能な範囲内で、なるべくランク数を多くする」ということがコツです。これは、

・昇格機会を多く設けることで社員のモチベーションUPに繋げる

・但し、等級間の違いが不明瞭だと、年功的或いは恣意的な昇格判断になってしまい社員から不満が生じやすい

といった要素に起因するものです。

 

但し、業態や職種によっては仕事の習熟スピードが速く、比較的経験が浅い社員からベテラン社員まで、多くの一般社員がやっている仕事は同じ(レベルの差を言語化することが難しい)というケースも散見されます。その場合、例えば、管理職にならない限り30歳前後から定年まで同一等級に滞留するモデルとなり、社員のモチベーションを維持する上で問題であると捉えられる企業も多いのでないでしょうか。

 

では、上記のような場合には、どのように考えていくべきなのでしょうか。

 

1.まずはレベルの差を具体的に考える

日々の仕事が同じであったとしても、仕事を進めていく上での具体的な能力・役割の違いに着目してレベルの差を言語化できないかを検討してみましょう。

言語化にあたっての観点例

 

上記のような観点を踏まえてレベルの差を言語化できそうであれば、等級ランク数を細分化する余地があると言えるでしょう。

 

2.等級ランク数を細分化せずに、モチベーションUPの仕組みを考える

それでもやはりレベルの差を表現できない場合には、無理に等級ランク数を細分化せずにモチベーションUPの仕組みを検討してみることも一案です。表現は様々ありますが、例えば、同じ等級のなかにステップアップを感じることができる下記のような仕組みをイメージいただければと思います。

仕組みのイメージ

 

上記仕組みを検討する上で欠かせないのが、「では同じ等級のなかでのランクをどのように定義するのか?」というルールです。能力・役割の差は表現できないことが前提となるため、主には経験値の差に着目することが納得感を得られやすく、社員のモチベーションUPにも繋げやすいと考えられます。

 

A:経験年数で定義する

シンプルにするのであれば、経験年数に応じたルールを設定することも一案です。上記表のイメージの場合、例えば、3-Ⅰ等級を5年経験したら3-Ⅱ等級にステップアップするといった具合です。一方で、経験年数で定義する場合、パフォーマンスに寄らず一律にステップアップしていくことになるため、ハイパフォーマーや若手社員から不満が生じるリスクがあることには留意が必要です。

 

B:評価結果履歴で定義する

パフォーマンスに応じてステップアップのスピードに差を設けたいのであれば、評価結果履歴を活用することも一案です。上記表のイメージの場合、例えば、3-Ⅰ等級でB評価以上を5回取ったら3-Ⅱ等級にステップアップする、或いは、ランクごとに号俸テーブルを設定し、上限まで到達したらステップアップするといった具合です。ルール設定次第では、ローパフォーマーはステップアップに多くの時間を要する仕組みとすることも可能です。

 

他にも、年齢や保有資格等に応じて定義することも一案ではありますが、状況によってはランク付けに対する違和感が大きくなったり(例えば、年齢層の高い未経験採用者が3-Ⅲ等級となる)、ステップアップ感には繋がりづらかったり(例えば、若くして資格を保有していたらいきなり3-Ⅲ等級となる)することには留意が必要です。

 

以上、本稿では等級ランク数の設定において、「等級ランクを分けられない!」と感じた際の考え方について紹介しました。レベルの差を言語化できないなかで無理に等級を分けると、後々に等級格付けに対する不公平感や不満が生じるリスクが高くなります。それであれば、能力・役割の要素以外に、例えば経験値の差を織り込んでみる等の工夫を凝らすことを一案です。ご参考にいただけますと幸いです。

執筆者

辻 輝章 | 人事戦略研究所 シニアコンサルタント

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。