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【森中】人事制度が「活きている」会社

初めて訪問する企業であっても、その会社の人事制度が「活きている」かどうかは小一時間話を聞いてみれば大体分かる。ここでいう「活きている」というのは、単に人事制度がシステムとして機能しているということに止まらず、常に人事制度上の課題が最新の状態にアップデートされており、改善に向けた取組みが全社的に行われている、そんな状態である。

 

例えば最近では「働き方改革」関連テーマに取り組む企業は多いものの、「とりあえず検討はしてみた」「とりあえずPJを作ってみた」という程度で、ゴールが見えない取組みになっているケースが少なくないように感じる。

この点、人事制度が活きている会社に聞くと、必ずと言っていいほど全社的な取組みになっており、かつ継続的な取組みになっている。短期的な成果を追い求めているわけではないが、ゴール設定は非常に明確だ。

旬なテーマに関わらず、「中長期的な人事戦略」「求める人材像」「教育との効果的な連動」「高年齢化対策」など、幅広いテーマで検討組織が作られており、人事部だけではなく現業部門の責任者も当然のように会議に参加している点が特徴的である。

評価者研修も毎年必ず行う、という会社もある。ほとんどの会社はよくて数年に1回、悪ければ人事制度を変えた時から5~10年研修を受けていない、という会社も少なくない。毎年実施している企業から話を聞くと、「評価は管理者の最も重要な役割の一つであるが、非常に難しい取組みでもあるため、トレーニングを欠かさないのは当然」と、明確である。

 

多くの会社では、一度人事制度がシステムとして機能するようになれば、運用期間中はそれほど熱心に手をかけないことが多い。しかし、それ以降大きなメンテナンスを行うのは5年先とか10年先になるため、その間の運用成果がその会社の成長力を左右する鍵になることは間違いのないところである。人事部サイドもその点は理解しているため、常にリニューアルはかけていきたいところではあるが、人事部自体のマンパワー不足、また現場責任者の忙しさ等を理由に、どうしても現状維持で手一杯になってしまう。

この点、人事制度が活きている会社では経営者を始めとして、人事部、現場の責任者にも「人事制度の重要性」が十分に浸透しており、人事制度の検討に時間をかけるのは当たり前、という空気ができている。どれだけ忙しくても時間を取る、ここが非常に強いと感じる。

「企業は人なり」が単なるスローガンではなく、経営者・管理者の基本的な役割・振舞いとして認識されている状態、企業風土と言ってもいいかもしれないが、多くの企業が目指すべき姿の一つと言えるだろう。

 

最後に一つ、人事制度が活きている会社では、人事部門の社員が非常に優秀であり、現場にも顔が利くなど影響力を持っている点も見逃せないところである。そういう会社にはコンサルタントの必要性が少ない、というのも筆者の立場としては頼もしいような、寂しい点でもあるのだが・・・。

執筆者

森中 謙介 | 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。初めて人事制度に取り組む中小企業がつまづきやすいポイントを踏まえ、無理なく、確実に運用できるよう、経営者に寄り添ったコンサルティングを旨としている。