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【森中】中小企業で「人事部門」に適材がいないという皮肉

中小企業では深刻な人手不足が続いている。外部環境として人手不足感が落ち着くのは当面先であろうし、そもそも落ち着くのだろうか?という感覚すらある。

各企業で少ない人材を奪い合う状態であり、とにかく人海戦術で乗り切るしかない、という様相である。経営者も採用に時間を割くわけだが、当然社長だけでは回らないため総務人事が採用に動くが、それでも足りない。元々、中小企業では間接部門は最低限の人数で回すのが一般的であり、「総務人事部長―総務人事課長―担当者1名」のような体制がざらである。事務員は数名いるにせよ、採用や人事企画を任せるわけにはいかないので、実質2~3名体制で長年やってきている企業がほとんどである。中には若手の担当者すらいない、という企業さえある。

 

さて、こうした状況は10年前ならまだよかったかもしれないが、人事・労務を取り巻く環境はがらっと変わってしまった。中小企業の問題は人手不足だけのことではなく、近年では未払い残業による訴訟リスク、社員のメンタルリスク、ハラスメント問題など、労務リスクのオンパレードである。そのどれに対しても、適切な防止策ができているところはほとんどない。そもそも時間が無く、また人事部門の能力、キャパも残念ながら追いついていない。

この点、私見では明らかに現状より2~3人程度、総務人事、特に企画系や日々の人事関連の問題解決にあたれる人材を増やした方が良い企業が多いのだが、「そんな余裕はない」と、経営者も切実なのか楽観的なのか、という状況である。

 

今中小企業でお金をかけた方が良い分野はどこか、と言われれば、人事労務部門の強化であろう。既存スタッフが優秀な人材で固められていれば良いが、これまで同部門にそれほどお金をかけてこなかった中小企業が多いことから、そこまで期待するのは難しい。

では社労士やコンサルタントを一時的に雇えばいいかというと、そういう問題でもない。日々の問題解決には向かないケースも多く、やはり組織の問題を内部の事情を理解した人間が柔軟かつ迅速に解決できる体制作りが必要である。

間接部門のコスト削減を優先してきた結果、緊急性のある「人の問題」の解決にあたれる人材が質・量ともに不足しているというのは皮肉な結果ではあるが、今からでも遅くはない。全社で「人の問題」を解決するための組織体制を抜本的に見直した上で、計画的な取組みを急がれたい。

執筆者

森中 謙介 | 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント

人事制度構築・改善を中心にコンサルティングを行う。初めて人事制度に取り組む中小企業がつまづきやすいポイントを踏まえ、無理なく、確実に運用できるよう、経営者に寄り添ったコンサルティングを旨としている。