目標管理をうまく運用するためには何から着手すべきか?
目標管理を評価ツールとして導入している企業は多くありますが、筆者がご支援先で見る限りは、多くの企業が運用上の課題を抱えておられます。
目標管理の運用は「期初(目標設定時)」「期中(目標遂行過程)」「期末(達成度評価時)」の3つのフェーズに分けることができますが、筆者のご支援先の企業様では「期初」の段階でつまずいているケースが多いように感じます。
期初の目標設定の中でもよくある問題としては、「組織目標と個人目標の連鎖が弱い」「そもそもの組織目標が不明瞭」「社員間で目標難度のバラツキがある」「曖昧な目標が記載される」等々が挙げられます。こうした問題解決のためには、会社・部門方針の明確化や評価者のスキル向上が必要になりますが、どうしても対策には時間がかかります。このうち、比較的対策が打ちやすいものとしては、「目標の明確化」だと考えられます。まずは対策が打ちやすいものから取り組むのも1つの方法だと思いますので、「目標の明確化」に関する対策をご紹介します。
「目標の明確化」の対策としては、以下のようなことが考えられます。
【使用禁止ワードの明示】
曖昧さを誘発するワードを一覧化し、使用されていれば目標を修正してもらう形です。ワード一覧としては、例えば以下のようなものが挙げられます
努力する |
努める |
徹底する |
頑張る |
目指す |
支援する |
助言する |
協力する |
調整する |
極力 |
可能な限り |
できるだけ |
なるべく |
必要に応じて |
積極的に |
協調して |
臨機応変に |
迅速に |
効率化する |
明確化する |
安定化する |
共有化する |
強化する |
向上する |
推進する |
図る |
検討する |
考慮する |
人間の脳は「曖昧にしたがる」という性質を持っており、意識せず目標を設定すると、どうしてもこれらのワードは使用しがちです。使わないようにするだけでも、目標の明確度合いは大きく変わるでしょう。
【研修内での目標添削ワークの実施】
研修の機会を設け、座学での学習および実践を行うのは重要です。実施方法の一例としては、以下のようなものがあります。
①目標明確化のために必要となる事項の伝達(講義)
②講義内容を踏まえ、昨年記載した目標添削を各自で実施(個人ワーク)
③個人ワークで修正した内容のグループ内ディスカッション(グループワーク)
グループワークを③で実施しますが、この際、各グループに目標設定スキルが高いであろう管理者を1名以上入れておくと、グループワークでの学びが効果的に進むでしょう。
【目標添削指導の実施】
研修等でコツをつかみ、上手く実践できる管理者もいらっしゃいますが、全員がそうであるわけではありません。可能であれば、人事部等が目標の確認・添削まで行うのが理想的ではあります。(人数規模の大きい企業になると、現実的ではないため、事例の作成等による代替が考えられる)
筆者は、約20名の社員数の企業様にて、目標添削のご支援を行ったことがあります。所感としては、「適正評価」を実現するための効果性は高かったように感じます。以前では目標が曖昧であるが故に、期末に評価を実施する際に、「達成したと言えばそうも言えるし、達成していないと言えば達成していないとも言える」という状況であったものが、評価実施の際に悩むことも少なく、上司と本人の間での認識のずれも発生しにくくなりました。
目標の明確化には、以上のような対策が考えられます。「目標の明確化」だけの実施は根本療法ではないですが、少なくとも、「設定された目標に対する適正な評価・納得度の高い評価の実現」は大きく推進するかと思います。まずは効果の出やすいことから取り組んでみてはいかがでしょうか。