【本阪】テレワークの定着よって、人事評価の在り方は変わったのか
2020年の3月以降、新型コロナウィルスによってテレワーク等新しい働き方が定着してきて随分と時間がたつ。テレワーク下における課題の一つとして、組織内のコミュニケーションの機会が減少し、マネジメント層が実際の勤務態度を目にできない中で、人事評価を行うことが難しいと言われているが、果たして人事評価の在り方は変わったのだろうか。
- 制度自体は変わっていないが、取組みについては変化が見られる
HR総研(ProFuture株式会社)が2021年2月に実施した調査(※1)においては、「テレワーク対応のためにすでに人事評価方法に変更を加えた」が5%となっており、実際は人事評価自体を変更していない企業が多いように伺える(ただし、本調査は2021年1月時点で行ったものであるため、検討中であって変更まで着手が出来ていない時期であった可能性もある)。
一方、テレワーク下における組織マネジメント上の問識を抱えていないわけではない。同調査によると「テレワーク下の人事評価における課題」については、「勤務態度を実際に見ることができない」が最多で54%、次いで「仕事のプロセスを詳細に把握できない」が49%、「他のチームメンバーとのコミュニケーションの状況がわからない」が45%などとなっている
こうしたこともあって、「テレワーク下での適正な人事評価のための取り組み」については、「特に取り組んでいることはない」が39%となっているものの、なんらかの取り組みをしている企業は61%であった。取り組みの内容については、「1on1等、面談・コミュニケーション機会の増加」が最多で39%となっている。
- 今後のニューノーマル時代の働き方における人事評価
前述の通り、評価を従来通りの考えで行うことが難しくなる傾向は、今後もテレワークやそれに付随したノンコアのフレックスタイム制等、より柔軟な働き方が定着していくとなれば、さらに強くなるだろう。
“決められた労働時間、監視下のもと真面目に働いているかどうか”よりも、“どこでいつ行うかの裁量は社員に任せるが、アウトプット(結果)が重視”されていく時流になり得るし、なりつつもある。
しかし、「勤務態度を実際に見ることができない」「仕事のプロセスを詳細に把握できない」を理由に、業務プロセス面、行動面などの評価を疎かにしてよいのか、という話は別であると筆者は考える。アウトプットの質を上げ、高い業績・成果を出すための“取組み面”を完全に度外視することは、組織の中長期的な成長・発展(又は不正防止)にとって望ましくはないだろう。
では、業務プロセス面・行動面においてどのように把握し、評価したらよいのかであるが、具体的に以下の方法が考えられる。
- 本人からの都度報告で判断する(チャットツール等を活用し、日常的に報告させる)
- 上司からコミュニケーションを意図的にとり、定期的に仕事の取組み状況を把握する
- オンラインであっても、定期的にチーム会議・部署間連携会議の場を設け、その場での発言・連携の姿勢・関わり方を見る
- オンラインであっても、顧客含め取引先との面談の場に同席し、対外的な対応を確認する
- 顧客、他部署、部下の部下・・・等、被評価者に関係する人からの評判や意見を定期的に把握する
・・・など、考えられることは多数ある。
- 人事評価の在り方よりもマネジメントの在り方を先に見直すべき
そう考えると、「勤務態度を実際に見ることができない…」という言葉は、マネジメント(評価者)側の言い訳になっていないだろうか。評価の仕組み自体を改革する以前に最も大事なことは、働き方の変化にあわせてマネジメントの在り方も考え方も変えていくべきでということであり、被マネジメント側も然りである。むしろ評価を変えたところで、マネジメントが変わっていなければ、問題は解決しない。
働き方が変わったとしても出来る限り部下の働きぶりを把握できる術を考え十分試行したうえで、それでもやはり人事評価の内容を変えるべきかどうかの議論を進めていけると良いのではないか。まずは”部下の働きぶり“を把握する取組みが何も出来ていないという企業は、どのようにプロセス面を把握するかを工夫してみることを推奨する。
※1 : 「テレワーク下における人事評価の実態調査」, ProFuture株式会社/HR総研, https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=303