【岡本】中小企業の退職金制度について考える③
前回のコラムでは、『ポイント方式』による退職金基礎額の算出について、どのような仕組みなのか?メリットは何か?を述べました。今回は構築時の注意すべき点を紹介します。
制度構築時に注意すべき点は次の2点です。
1.退職金ポリシーに合ったポイント付与項目を選択する
2.目指す退職金カーブとなるようにポイント数を工夫する
・退職金ポリシーにあったポイント付与項目を選択する
ポイント方式の最大の特徴はポイントの種類によってきめ細かく貢献を反映できることです(詳細は前稿「中小企業の退職金制度について考える②」を参照)。その為、退職金ポリシーに合った付与項目を選択する必要があります。
例えば、評価や昇格による影響を大きくする実力重視の制度とするならば、『等級』や『役職』を付与項目として設定することが有用です。一方で勤続貢献を重視したいのであれば、『勤続年数』を付与項目に設定します。
上記以外の付与項目の設定も可能ですが、注意点としては種類が増えれば制度が複雑になり、導入後の管理コストも大きくなります。
・目指す退職金カーブとなるようにポイント数を工夫する
ポイント数の設定により退職金の積み上がり方(退職金カーブ)が変化し、退職金カーブの形は制度の目的によって目指すべき形が異なります。
例えば、人材の長期定着を狙うならば、社歴が浅い/年齢が若い社員のポイント数を低く抑え、一定の社歴や年齢となる段階からポイント数を増やすことで、社員の離職防止が期待できます。
このような例であれば、『勤続年数』や『年齢』を付与項目として、一定の基準を境にポイントの増加数を大きくすることで、基準後の退職金カーブの傾きがきつくなる形状となります。
例 勤続ポイント 5年目未満(3Pt)、5~10年目(5Pt)、10~15年目(12Pt)…
このように、目的に沿った退職金カーブとなるようにポイント数を調整しながら設計を進めます。
全3回にわたり中小企業の退職金制度についてポイント方式を中心に述べてきました。第1回にも述べたように、ポイント方式を採用する企業は増加傾向にあります。その意味で、ポイント方式というものがどのような特徴を有して、構築時にどのような注意が必要かを理解しておくことが肝要です。そのうえで、自社に合った退職金制度の構築を目指してください。