【森中】人事制度上、「残業」が免除される働き方について考える(1)
「働き方改革」の一環で、長時間労働の抑制に取り組む企業が増えている。労働者の志向にも徐々に変化が見られ、私のクライアント先においても、残業の無い働き方を希望する社員の層が増えてきているように日々感じている。
さて、本来時間外労働については36協定の範囲内であれば業務命令となり、社員は拒否できないというのが労働基準法上の原則である。しかし、例外的に特別な事情が認められる社員に対しては「残業をさせてはいけない」というルールが存在しており、代表的な例としては育児・介護休業法における「時間外労働の制限」がある。この他にも、私傷病等の事情がある場合に会社が独自に「短時間勤務制度」を設け、残業を免除している例があるが、いずれも「やむを得ない事情がある」場合に限って認めていることがほとんどである。
これに対して、特に事情が無い場合でも、極端に言えば「プライベートを充実させたいから残業はできない」等の理由であっても、残業の免除を「人事制度上」認めている企業の例がある。物理的に残業が発生しない仕事であるとか、定年後の社員であるため健康上の配慮を会社がしている、というような理由も無く、本来であれば定期的に残業が発生する可能性のある業務に従事している場合でも、「働き方のコース」のような形で本人が選択し、会社が承認すれば「残業をさせることができなくなる」という仕組みである。
働き方改革の流れに沿う内容ではあるものの、非常に大胆な仕掛けでもある。こうした人事制度を導入するに至った企業の考え方にはどういった特徴があるのか、実際に制度を運用する際のリスクは何か、どのように解消していくのか、といったことについて、何回かに分けて考えてみたい。