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【森谷】人事制度の見える化(1)

人事制度構築に関するご依頼について共通しているのは、「人事制度をオープンにし、社員に見えるようにしたい」というものです。

 

評価基準や賃金制度をオープンにしないなら、社長や役員が自分たちの主観で評価し、それに合わせて賃金を決めればよい訳です。

ただし、特に中小企業の場合に顕著ですが、社員は「社長の好き嫌いで決まる…」といった認識や、「将来きちんと生活できるだけの収入になるんだろうか…」といった不安を持ちやすい傾向があり、モチベーションの低下につながりやすいため、大企業よりも「見える化」は重要です。

 

人事制度の「見える化」は、基本的にはメリットしかありません。

 ①等級制度を見える化することで、人材育成の指針が明確になる

 ②評価制度を見える化することで、公正さ・公平さにつながる

 ③賃金制度を見える化することで、社員は自分自身の将来設計ができる

等が一般的なメリットでしょうか。

 

しかし、特定の条件下ではデメリットが顔を出します。

 

(1) 賃金水準が低い場合

特異な業種・職種で、仕事自体が非常に魅力的な場合を除き、賃金水準が低い企業がオープンにするとデメリットしかありません。

経営改善により拠出可能人件費を増やし賃金水準を引上げるか、優秀者・標準者・劣等者への賃金配分を変更し、一部の社員の賃金水準を引上げるくらいしか手はなく、この場合は難易度が高いでしょう。

 

(2) 超ハイパフォーマーがいる場合

一般的に人事評価は、100点満点の人事評価表の点数によって給与・賞与水準が決まります。

しかし、評価基準の都合上、例えば売上達成率が120%の社員も200%の社員も同じ100点だったりします。超ハイパフォーマーは「どれだけやっても上限は決まっているのか…」と理解し、モチベーションを損ねてしまいます。

このような場合は、加点評価の部分を取り入れ、時には100点満点を大きく超えることが可能な評価基準作りと、それに対応する賃金制度が必要になるでしょう。

 

(第25回に続きます)

執筆者

森谷 克也 | 人事戦略研究所 所長

企業の成長を下支えする人事戦略の策定・活用が図れるよう、
経営計画・人事システム・人材育成を一連で考える
人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。
企業支援においては、①企業風土(社風、経営理念など)を大切にすること、
②中期的視点(業界環境、管理者レベル等)を持つこと、
③そして何よりシンプルで分かりやすいことをモットーとしている。