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<社内評価の強化書 書評>世の中の上司よ!部下に適切な評価をしているか?

著者:株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 森中 謙介
出版社:三笠書房
定価:1,400円(税別)

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あなたは、思っている以上に
自分の社内評価をコントロールできる――。
本当に?そう思うかもしれませんが、事実です。
そのためには、まず上司が陥りがちな「評価エラー」を知ること。
そこに、あなたの評価を下げないための、あるいは
あなたの評価を上げるための重要なポイントがあるのです。
――著者

 

 

・はじめに

著書の森中謙介氏は、若手の出世に詳しい人事のプロです。
株式会社新経営サービス人事戦略研究所のシニアコンサルタントとして活躍。
新卒入社者で最短で昇進したご自身の経験をもとにして、出世する社員とはどのような人なのか、
性格や行動習慣などを研究して体系化した結果を本書にまとめています。
その他著書に「社員300名までの人事評価・賃金制度入門」。

 

・本書の特徴

本書では上司の「評価エラー」、つまり誤った判断を行ってしまう点について、複数指摘を行っています。
その「評価エラー」を逆手に取って社内評価を上げていこうというアプローチが興味深いです。
同期の中でも出世の早い人はこんなことにも挑戦しているという説得力があります。
SNSを出世に活用するという着眼点は、現代ならではではないでしょうか。

 

・本書の内容

本書は、序章から終章までの7章構成で書かれています。
読みやすい文体で約260ページというボリュームなので、
通勤時間や休み時間のような細切れ時間を活用して読書することができます。

「序章」では、上司に起こる「評価エラー」について書かれています。
数人の評価者に的を絞った戦略方法の項目では、そんな人が近くにいるなあと思いながら楽しんで読みました。
ニュースなどでは若手の出世意欲が低いという報道がよくされていますが、実際には出世意欲が高まりつつあることや、
社内評価を高めることで仕事がしやすくなる・面白くなるという良い循環が出てくるということも、説得力がありました。
本書の内容を網羅した説明がされているので、できれば序章から読み進めていくことをおすすめします。

 

「第1章」では、「ハロー効果」について詳しく説明されています。

肩書や学歴などの特徴がその人自身の評価に影響を与えてしまうという心理学の考え方です。
著者は実際に人材採用の場面で「ハロー効果」を感じたことがあるという。
それは、新卒採用時に「野球のキャッチャー経験者が優遇される」点です。
理由としては、「キャッチャーの全体を見渡す広い視野は、コンサルタントの適正として重要な要素」だとのこと。
しかし実際は、「社長が野球経験者でキャッチャーを高く評価しているから」という「ハロー効果」が影響しているのではないかという指摘は、特に興味深かったです。

今更趣味を始められないという方のために、比較的気軽に行なえる方法を紹介しています。
例えば「字の練習をする」、「上司のサポートをする」、「スピード重視の仕事をする」、「異なる分野の勉強をする」、「報連相ではなく相連報をする」、「プレゼンリハーサルをする」、「不備のない仕事をする」、「一緒に仕事がしたいと思わせる」という方法です。
それぞれの方法については、データを用いてなぜこの方法が有用なのかという説明がされているので、興味をもった方はぜひ本書をご覧ください。

 

「第2章」では、「遠近誤差の法則」を取り上げています。

私の会社でも、評価表提出は上半期と下半期に分かれて評価を行う場合が多いのですが、著者は、その評価が決定する時期に近しい出来事から評価が行われてしまうことを「遠近誤差の法則」と説明しています。
つまりは評価日近くに目覚ましい活躍をした社員の評価は評価期間ではなくても、良い評価がされてしまうようです。
この誤差を少なくする方法として、定期的に上司に業務内容を報告してアドバイスをもらうための面談を行うと良いとされています。
実際に東レの副社長にまで出世した方の方法を紹介していたので、非常に興味深い内容でした。
私の部下にもチャレンジアピールを良くする人がいるのですが、それはこういう意味だったのかと驚きました。
その他にもいつチャレンジを行えば良いのか、会議中の発言をどうするか、報告書の内容には何を書けば良いのかという
日々の業務内で活躍していると思わせるような方法について書かれているので、業務を戦略的に行いたい方はこの章に注目するとよいでしょう。

 

「第3章」は、「寛大化傾向の法則」を紹介しています。

最近では嫌がる人の増えた「飲みニケーション」や「会社行事」を利用しようという提案です。
それ以外にも、「かばん持ちを経験する」という提案から、「社長宅の近くに引っ越す」という驚きの方法まで紹介されています。
要するに、社長の人となりを知って自分を売り込むために使える方法はすべて活用せよということなのですが、その売り込み方法が「露骨なおべっかをしろ」「ネガティブな発言はするな」など、自分ではなかなかそこまでできないな、と感じる内容が目立ちました。

エゴグラムを紹介して社長をそれに当てはめて考えようと書かれているのですが、社長にエゴグラムをやってもらう方法が私には思いつきませんでした。
他の章と比べて具体的な内容に乏しいような気がしてしまい、残念でした。
それ以外にもSNSを活用する方法や、失敗を隠さないなどの方法も紹介されていますので、ご自身にあった方法を選んでみてはいかがでしょうか。

 

「第4章」は、「対比誤差の法則」をテーマに選んでいます。

評価は絶対評価ではなく相対評価のため、上司が若い頃どうだったか、同期と比べてどうか、という誤差が入り込んでしまうというのです。
私自身の経験もありますが、会社側には明確な評価基準があまりなく、客観的な評価がしにくいのです。
「経営理念や社訓を活用する」、「実際の上司に若い頃の話を聴く」、「上司が苦手とする部分を積極的にフォローする」など
上司から見て使い勝手の良いやつになろうと説明しています。
確かにこんな部下がいたら、出世をさせて自分の下に配属させていたかも、という気持ちになりました。

 

第5章は、「論理誤差の法則」です。
イメージが先行して直接的な関係がないことであってもそれを結び付けて評価してしまうことを論理誤差の法則と呼ぶそうです。
評価をする人の価値観や性格に起因してしまうため、回避が難しいとのこと。
血液型の話は、現在はブラッドハランスメントとして有名なため、私の会社ではタブーになっています。
しかし、O型=大ざっぱで仕事ができない、B型=マイペースで協調性がない、という判断基準を上司が行っていた・行いそうな場合は、あらかじめ事前に対策を行う必要があるとのことです。
過度なキャリアアピールやワークライフバランスは上司に誤解を与えがちなため極力避けた方が良いと指摘している一方、
必要な残業であれば認めるべきだと著者は主張しています。

 

終章では、実際に著者が経験した社内評価が向上したことで仕事がどのように変化したかがまとめられています。
これから社内評価を強化していきたい方にとっての励みとなるのではないでしょうか。

 

・こんな人におすすめ

本書は、まさに教科書(強化書)と呼ぶべき本です。
去年管理職に昇進し、部下の評価をどのように行っていけばいいかと悩んでいた時にこの本に出会いました。
わが社では、部下の評価を行う時にある評価基準に従って点数をつけています。
部下自身の自己採点も考慮して評価を行っているのですが、常々誤った判断をしてはならないとプレッシャーを感じていました。
しかしそれは、人間の心理が影響しているため、完全になくすことは不可能だそうです。
本書を読むことで、社内評価はどのようにして行われるのかという流れを学び、実在する評価エラーを知ることで、部下を正しく評価するためのヒントを得られたように感じています。

私のような新米管理者を初めとして、これから出世を考えている若手社員にもおすすめの一冊です。