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<社内評価の強化書 書評>社内評価の強化書であり教科書です

著者:株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 森中 謙介
出版社:三笠書房
定価:1,400円(税別)

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あなたは、思っている以上に
自分の社内評価をコントロールできる――。
本当に?そう思うかもしれませんが、事実です。
そのためには、まず上司が陥りがちな「評価エラー」を知ること。
そこに、あなたの評価を下げないための、あるいは
あなたの評価を上げるための重要なポイントがあるのです。
――著者

 

 


 

厚生労働省の「学歴別卒業後3年以内離職率の推移」によると、企業に就職して3年以内に離職する人は3割を越えています。
現在では採用された企業で定年まで継続して勤務する終身雇用の風潮は薄れ、転職も珍しいことではなくなりました。

 

転職の理由として考えられる理由は大きく分けて、
1.雇用のミスマッチ、2.勤務環境、3.人間関係の3つが挙げられると思います。

 

1つ目の雇用のミスマッチは企業側が求めるニーズと働き手が想像していた職に対するイメージの不一致を指します。
これは就職活動時の企業研究の不足や企業側との意思疎通が図れなかったことが要因です。

 

2の勤務環境は勤務時間や休暇、給与、昇級などのことです。

 

3の人間関係は職場の上司や所属先の同僚、取引先、クライアントとの関係を指します。
離職と雖も就職試験、面接など数々の難関を乗り越えて就職した企業ですから、より良い労働環境を求めて職場を離れる人や自己をもっと評価して欲しいといった不満を持っている人は、本来やる気に満ち溢れていてもっと輝ける人達なのではないでしょうか。

 

職場で高く評価してもらったり、多くの仕事を任せられてキャリアアップしたり、出世することができたら、離職や職場への不満が減り、仕事がもっと楽しくやりがいのあるものに見えてきます。
森中謙介さん著作の『社内評価の強化書』には自分の評価を上げる秘訣とともにいち早く出生するコツ、仕事の環境をより良くするエッセンスが詰まっています。

 

本書では「上司の評価エラー」を逆手にとって人間心理を上手く利用することで社内評価を高めます。

もちろん、小手先だけの技量ですと出世欲がただ高い人物と思われて敬遠されたり、大きく見せすぎて内実伴わず、自分を苦しめて仕事でミスをできなくなるような状況に追い込まれてしまいかねないのですが、自分のキャリアアップを図りながら評価の向上を実践できるところが本書の素晴らしいところです。

 

本書では「上司の評価エラー」を①ハロー効果、②遠近誤差、③寛大化傾向、④対比誤差、⑤論理誤差の5つに分けて取り上げています。

 

①のハロー効果とは、経歴や肩書などプラス、マイナスの特徴をその他の評価要因に反映させることです。
一種の評価エラーに該当しますが、日常的な行動でプラスのハロー効果になりそうな事例がいくつか紹介されています。
字の上手さ、上司への協力的な姿勢とサポート、仕事のスピード、自己研鑽、報・連・相の応用方法などがレクチャーされています。
これらは今日からでも取りかかることができ、仕事への準備を欠かさず行ったり、上司、会社と連携をすることで仕事のミスも減り、職場の人間関係の悩みも軽減されることでしょう。
また、ハロー効果の積み重ねで、上司や取引先からまたいっしょに仕事がしたいと思われるようになります。

 

②の遠近誤差は、評価する時期に近い行いが印象に残りやすく評価の対象として反映されやすいことを意味します。
つまり、評価の査定時期が中盤~終盤にさしかったところで効果的に成果をアピールすることが大切になります。
詳しくは本書でお楽しみ頂きたいのですが、評価の対象期間をフルに活用できるアプローチが画期的です。
評価期間の序盤では周りと差がつくように思い切った挑戦をすることが勧められています。
仮に失敗しても序盤なので修正が効きやすく、積極的に行動することが頑張りとして評価してもらいやすくなります。
序盤から順調に進められている場合は、中盤・終盤に目標を上方修正してさらに成果をあげることもできます。
中盤・終盤にかけては、もう一つ上司の仕事に協力し、上司の手柄を増やすことが提言されています。
上司の評価が上がると同じ部署内の評判も同様に上がる相乗効果が見込まれます。

 

続いて③の寛大化傾向とは適切な評価を下さずに評価結果を甘くしてしまうことです。
本書ではただ甘くしてもらうためのノウハウではなく、会社の経営理念、行動指針に働きかけた方法でレクチャーしています。
エゴグラム自己診断チェックリスト(本書148頁)で自己分析とともに上司の性格を診断してみると相互理解が深まり、正当に評価してもらいやすくなりそうです。
また、寛大化傾向の反対の意味を持つ「厳格化傾向」という言葉があります。
悪い評価を恐れて目標を下方修正したり、頑張って成功し続けないといけないプレッシャーに悩むことも出てきますが、決して失敗が許されないわけではありません。
森中謙介さんの言葉では「正しい失敗」と表現されていますが、上手に失敗することの大切さが述べられています。
自分の弱点や失敗を隠さずに伝えること、仕事のハードルを下げず果敢に挑む姿勢、同じ失敗を繰り返さないことに強く共感できます。

 

④の対比誤差とは明確な評価基準なしに評価者自身、或いは他者を基準にして被評価者を評価することで生じるエラーのことです。
客観的、公平に評価されずに被評価者の評価が実際より高評価になったり、逆に過小評価を受ける畏れもあります。
対比誤差で不利益を被らないように本書では、明確化されていない評価基準を理解して行動することが提案されています。
具体的には世代別のギャップ、仕事観を理解することがヒントになりそうです。
上司の苦手分野を積極的にフォローすることも有効です。

 

⑤の論理誤差とは、イメージや主観で評価対象と無関係なことで相手を決めつけて評価してしまうことです。
マイナス評価を受けないように対策を講じることと、プラスに評価されるために「できる人」と認識してもらうことが必要となります。
日々の行動で実践されていくことが評価、キャリアアップにつながります。
まず、自身が知らずしらず悪く関連付けされないためには、日常から上司とコミュニケーションを取り、誤った印象を持たれないように伝えることが大切です。
過度にキャリアアピールを行ったり、社訓を壊すような主張は憚られやすいようです。
次に「できる人」と思われる6つのポイントが本書に列記されています。
声が大きい、会社・仕事・上司が好き、仕事を断らない、雑用処理を巧みにこなす、叱られ上手、「忙しい」を口にしないことです。
1つ1つが特別なことではありませんが、続けていくことで上司から好かれてプラスの論理誤差が起こりやすくなります。

 

これら5つの上司の評価エラーの応用は社内評価を上げて出世につながるだけでなく、職場の環境を快適に働ける場へと変えることもできます。
本書『社内評価の強化書』は強化書であり、働き方や会社への姿勢を学ぶ教科書でもあると言えます。
自分の評価が実力未満に採点されて困っている人、高く評価されて出世を目指したい人、職場の環境に悩んでいる人にも是非お勧めです。