人事制度コラム

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評価者の評価力強化法4選

人事評価を行う中で、評価者の評価力強化の必要性を感じている企業様も多いのではないでしょうか。実際に評価者の評価力に関して、次のようなお悩みを聞くことも少なくありません。

・新たに評価制度を導入するが、評価者が評価をしっかりできるか不安だ

・評価者間で評価基準が揃わず、評価結果がバラついてしまう

そこで、今回はすでに人事制度がある、これから作る予定、のどちらでも取り入れられる人事制度運用で行う評価者の評価力強化法4選をご紹介したいと思います。

 

①:評価者研修

評価者教育の1丁目1番地は評価者研修です。すでに実施している企業様もあるとは思いますが、評価者研修を実施する上でのポイントを2点お伝えいたします。

 

ポイント1:実施時期

研修の実施時期において、評価者の都合が合わせやすい時期、業務が落ち着く時期と言った決め方になっていないでしょうか。このような要素を考慮することは重要ですが、効果的にするためには仮にフィードバックをテーマに実施するならば、理想はフィードバックを実施する直前の実施です。数カ月も前に研修を実施すると本番までに期間が空いてしまい評価者研修の内容の多くが抜け落ちてしまいます。効果的に研修を実施したい場合には、研修内容をすぐに実践できる時期の開催をお勧めします。

 

ポイント2:反復で実施

評価者研修を1度実施した程度では評価者の評価力が格段に上がるわけではありません。定期的に評価者研修を実施するなど、反復することが重要です。何度も繰り返すことで次第に評価者の意識変革や評価結果の改善に繋がります。

 

なお評価者研修のプログラム検討をお考えの方は以下の弊社サイトもご参考にしてみてください。

評価者研修ドットコム:https://hyoukasya.com/

 

②評価結果分析・フィードバック

皆様の企業では人事評価の結果を分析していますか。全社の平均点、部署別の平均点、各評価者の平均点、本人と一次評価者の点数差など詳しく分析すると評価者の評価傾向が見えてきます。

過去には以下のような事例がございました。

問題:毎年営業部門の評価が平均よりも低くなっているが、最終評価で調整するのみで原因究明を行っていなかった。

事実:営業部門は他部署より平均が低い

分析:二次評価者のタイミングで平均点が大きく下がっていることが判明

原因:二次評価者が他の部署よりも評価を厳しく付ける傾向があった

改善:客観的データをもとに評価が厳しすぎる旨を伝えたことで、次の評価で改善が見られた

評価結果を分析することで、客観的な事実を基に評価者へ自らの評価傾向をフィードバックすることができます。その結果、評価者が自らの評価傾向を把握し、次の評価に向けての改善を行いやすくなります。このようなフィードバックがなければ、評価者が自らの評価傾向に気付く事は難しいでしょう。

 

参考までに評価傾向の例を掲載いたします。

評価傾向

評価傾向の特徴

ハロー効果

部下を評価するときに、目立ちやすい特徴等に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められてしまうエラー

遠近誤差
(期末誤差)

記憶に残りやすい評価直前の行動事実を評価期間全体の行動事実と捉えてしまうエラー

厳格化傾向

特定の能力や特性について、実際より悪く(厳しく)評価を行ってしまうエラー

寛大化傾向

特定の能力や特性について、実際より良く(甘く)評価を行ってしまうエラー

中心化傾向

実際は優劣があるにもかかわらず、評価結果が中央に集中し、その差がはっきりしないエラー

対比誤差

自分自身を基準におき、自分の能力や特性と比べて評価してしまうエラー

 

 

③評価者間での擦り合せ

評価者間で連携を図ることは重要です。一次評価、二次評価と進む中で、一次評価の結果を参考に二次評価者が評価を付けることになります。ここで少し工夫をして、二次評価を付ける際に一次評価者と評価結果のすり合わせを行い、擦り合せた結果を二次評価結果として採用します。この進め方は双方の評価者に以下のようなメリットがあります。

・二次評価者は一次評価者から被評価者の詳細な情報を獲得でき、適正な評価に繋げることができる

・一次評価者は二次評価者の評価の観点を知ることができ、次の評価に活かせる

評価者間で連携を自主的に取っている方もいるかもしれませんが、運用ルールとして明示し徹底することで、会社全体の評価力の底上げにつながります。

 

④評価ツールの提供

評価に関するツールを整備することも評価力強化に有用です。被評価者の普段の行動について記憶に頼っているならば行動観察用のメモフォームの提供や、フィードバック面談時の流れが整理できていない場合には面談シミュレーションシートを提供するなど、評価者が困っている部分に対して、標準ツールを提供します。これにより、評価者の取り組み方を標準化することに繋がります。

 

評価者の評価力は人事制度を整備するだけでは大きくは強化されません。人事制度を運用する中で評価者研修などの強化策を繰り返し実施することで徐々に成長していきます。評価者の評価力強化は一朝一夕に達成されるものではありませんが、今回ご紹介した方法を参考に根気強く継続することが重要であり、あえて5つ目の強化法を上げるならば『評価者教育を継続すること』と言えるでしょう。            

執筆者

岡本 充裕 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。