部門評価連動賞与を実施する場合の効果と副作用
今回は、部門業績等の部門評価に応じて、各部門の社員に還元する “部門評価連動賞与“について、その狙いと副作用・その対処法などポイントを整理します。
■部門評価連動賞与を取り入れる狙い
まず一つは、部門長だけでなく各部門の社員に対して、部門業績・成果への「意識付け」を行うことです。個人成績だけでなく、部門全体の評価にも視野を広めさせ、部門内で連帯感をもって目標達成することを意識付けたい場合に有効でしょう。
また、事業部や店舗、支店等、同じミッションを持った組織において、売上・営業利益等の同じ指標で評価を行い、各部門の目標達成に対するインセンティブを与えることです。 “他部門”という外部の刺激も与えながら、それぞれの部門目標達成に向けた「動機付け」を図りたい場合に有効でしょう。
こうした意識付け・動機付けによって、最終的に会社全体の目標を達成しようというものが部門評価連動賞与の主な狙いと言えます。
■部門評価連動賞与を取り入れる副作用とその対処法
しかしながら、部門評価連動賞与を取り入れると副作用が起こることにも十分留意が必要です。例えば以下のようなことが考えられます。
①社員の不公平感
例えば営業支店間において「常に高評価支店」「常に業績不振支店」というように固定化が生まれ、それに伴い賞与支給額格差が常態化する可能性もあります。こうなると社員には不公平感が生じ、特に新卒社員や、業績不振店の優秀な社員にとって、それが顕著に感じられるでしょう。もし、異動がほとんどなく会社命令による固定的な配置となれば不公平感はさらに助長されます。
対処法としては、一般社員層は部門評価を賞与に反映させない、異動のチャンスとして自己申告制度を導入するなど、社員の意欲を削がない施策と、選択肢を与えることも重要でしょう。
②部門間での連携・一体感の希薄化
自部門のことを優先したい気持ちから、他部門の協力に消極的となり会社全体の生産性を落とす、あるいは部門横断的施策を推進しづらいといった副作用があります。
対処法としては、業績のみならず、他部門連携・協力という視点を評価として取り入れていくこと等が考えられます。
③部門の序列付けになる
各部門に評価ランクや評価点をつけると、部門間で序列感が発生します。
そもそも例えばメーカーのように、開発部が設計・開発し、生産部が製造し、営業部が販売するというように、各部門が分業することにより会社としての付加価値を生んでいる場合、部門を序列化すること自体、好ましくないでしょう。
対処法としては、このような組織では最初から部門評価を入れない、全社影響度が大きい際立った貢献があった場合のみ高評価とする、あるいは表彰制度で報いる、などの方法が考えられます。
これらすべての副作用に対して言えますが、部門評価による賞与反映の影響額の大きさにも考慮が必要です。メリハリの効いた部門評価係数を用いる、部門業績と完全に連動して原資配分額を決めるなど、極端に反映すると、より副作用が顕著になりますので、ドラスティックにしすぎないことも肝要です。
狙いを意識付けや動機付けとするならば、評価されるという事実だけでも効果は一定あると言えます。自社にとって部門評価連動賞与が必要か、導入・見直しする際のヒントになれば幸いです。