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【森谷】中小企業における「ジョブ型人事制度」⑥

(前回の内容のダイジェスト)

ジョブ型人事制度における報酬制度を考える際、その職種・職務の市場価値を測定するのは何とかなりそうである。

問題になるのは「配属・異動により賃金水準が変わってしまうことへの抵抗感」である。

 

「ジョブ型人事制度=職務により賃金水準が異なる」ということですので、職種・職務により賃金水準を変えていくことが大まかな方向性だということに反意はないかと思われます。

(ただ、職種・職務により賃金水準は変えず、評価のみにジョブ型を入れるという方法も、筆者は賛成です。)

 

まずは、職種・職務により賃金水準を変える方法をいくつか列挙しますので、検討の際の参考にしていただければと思います。

 

職種ごとに、異なる報酬制度を設ける

営業職は低めの固定給+変動幅の大きい歩合給、事務職は安定的に上がる固定給、といった形で分ける方法をイメージしてください。

 

職種ごとに、手当の金額を変える

工事職には大きめの現場手当、設計職には少なめの設計手当、事務職には手当なし、といった形で分ける方法をイメージしてください。

 

職種ごとに、昇給・昇格スピードや賞与額を変える(制度としてやる)

技術職は昇給額が大きく、また昇給スピードが速く、賞与も多い。現業職は、技術職に比べて昇給額が小さく、昇格スピードも遅く、賞与も少ない、といった方法をイメージしてください。

 

職種ごとに、昇給・昇格スピードや賞与額を変える(運用でやる)

制度として見える化はせず、経営陣・人事が意識して昇給額・昇格スピードや賞与支給額をコントロールする方法をイメージしてください。

 

※①②③④の順で、会社としての意思は明確になりますが、代わりに人事制度としては複雑になります。

 

以上のような方向で、まずは報酬制度を整備した上で、入社・異動時にどうするかを考えることになります。

方法としては、以下のような形でしょうか。

 

<入社時>

①初任給を変え、機械的に運用する。ある意味で会社の意思表示ですので、その考えに賛同する方々が入社されるのであれば、運用上も問題は起きません。

②初任給は変えず、一定の等級から職種・職務別に水準が変わるよう設計する。定年までのキャリアが概ね見えてくる等級から分かれていくのがよいかと思います。複線型の人事制度を併用し、管理職は統一、専門職は職種・職務別、といった設計も考えられます。

 

<異動時>

①人事異動時、機械的に該当の報酬制度に変更する。

②運用の中でカバーすべく、教育目的かつ賃金が下がる異動の場合に限り、異動前の報酬制度を引きずる、もしくは調整給で穴埋めする。

③コースを分けておく。総合職・一般職の総合職イメージ。一般職は職種・職務別にしつつ、ジョブローテーションを繰り返してキャリアアップする総合職は職種・職務別にしない。

 

具体例を出さずに列挙しましたので、お見苦しい部分もあろうかと思いますが、ご容赦ください。

 

ジョブ型人事制度を導入する場合、これまでの歴史を踏まえると、大企業では運用が難しいでしょう。評価制度はともかく、報酬制度は大きな問題になります。

 

一方、中小企業では、オーナー経営者の強い意思で人事制度を運用できたり、そもそも新卒入社の社員の人数が少なかったり、異動時も経営者・管理者がキチンと話をした上で実施できるという側面がありますので、運用に乗りやすいかと思われます。

 

中小企業こそジョブ型人事制度です。これらの内容が参考になりますと嬉しく思います。

執筆者

森谷 克也 | 人事戦略研究所 所長

企業の成長を下支えする人事戦略の策定・活用が図れるよう、
経営計画・人事システム・人材育成を一連で考える
人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。
企業支援においては、①企業風土(社風、経営理念など)を大切にすること、
②中期的視点(業界環境、管理者レベル等)を持つこと、
③そして何よりシンプルで分かりやすいことをモットーとしている。