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【岡本】中小企業の退職金制度について考える②

前回のコラムでは、中小企業と大企業の退職金制度の傾向や世の中の流れなど、退職金制度の現状を述べました。

今回は大企業の多くが基本給と退職金基礎額を切り離す方式を採用しているに着目し、8割以上の大企業が採用している『ポイント方式』による退職金基礎額の算出について、どのような仕組みなのか?制度のメリットについて述べたいと思います。

 

●ポイント方式による退職金支給額の仕組みについて

 

ポイント方式による退職金支給額の算出は、以下の計算式で行われます。
 『①在籍期間中のポイント累計 × ②ポイント単価 × ③支給率』

 

①在籍期間中のポイント累計
毎年、『勤続年数』『等級/階層』『役職』『人事評価』などをもとに付与したポイントの、在籍期間における累計ポイント。

 

②ポイントの単価(例:1ポイント=1万円など)
予め設定した1ポイントの単価。

 

③支給率
退職事由(会社都合や自己都合による違い)や勤続年数(入社3年未満は支給なし)による支給率

 

<具体的イメージ>
例えば、勤続年数を1年毎に25ポイント付与するとした場合(ポイント単価1万円、支給率100%)、22歳で入社し、60歳定年まで勤めあげると、計算式は
『①勤続年数1年ごとに25ポイント×38年 ×②1万円 × ③100%
となり、退職金支給額は、950万円となります。

 

 

●ポイント方式退職金の主なメリット
ポイント方式の主たるメリットは2つあります。

 

(ア)在籍期間を通した各年度の貢献度を退職金に反映できる

前述の通り、ポイント方式は毎年ポイントを付与し、退職時の累積ポイントに応じて退職金支給額を決定する仕組みです。勤続年数が長いほど、累積ポイントが増えるだけでなく、毎年のポイントを付与する項目を工夫することで、毎年どのような貢献を会社にもたらしてくれたかを退職金に反映することができます。

  等級/役職  ・・・等級・役職ごとの職務の遂行レベル大小

  人事評価結果・・・1年間の仕事のパフォーマンスの大小

 

(イ)退職金の算定が基本給と分離されることで、給与制度の改定が退職金制度へ影響しなくなる

基本給をベースに退職金を決定する仕組みの場合、給与制度の改定が退職金にまで影響を及ぼしてしまいます。したがって、退職金への影響を回避したい方針であれば、影響が出ない範囲内でしか給与制度改定を実施できないことになります。場合によっては、このような制約条件下では、給与制度の抜本的な改革をあきらめざるを得ないといったこともでてくるでしょう。

ポイント方式は、退職金制度を給与制度と分離した構築となるため、給与制度の改定による退職金への影響を考える必要がなくなります。

 

以上のようになります。

勤続貢献以外も退職金に反映したい、給与制度から退職金制度を切り離したいとお考えの場合は、ポイント方式の退職金制度導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

さて、次回のコラムでは、ポイント方式の構築例を紹介しつつ、制度構築時に注意すべき点について詳しく述べていきたいと思います。

執筆者

岡本 充裕 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。