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適切な等級段階数のあり方

等級制度において、適切な等級段階数とはどのようなものでしょうか。「言語化できる範囲で最大の個数に設定する」というのが、比較的オーソドックスな考え方の1つと言えるでしょう。これは、「言語化ができていなければ、各等級の違いが不明瞭になり、年功的な昇格運用を助長してしまうため、言語化できることが重要である」という側面と、「なるべく等級の段階数が多い方が、昇格の機会も多く、社員のモチベーションの側面からは良い」という側面の最大公約数を取るという考え方です。

 
多くの場合、この考え方をベースに検討を進めて問題ないのですが、あえてこの基本を外すことで上手くいくようなケースもあります。以下、従業員数が約1000名の製造業A社での事例をご紹介します。

 
A社では、等級の大括りを「J」「L」「M」という3段階に分け、その中を2段階、3段階、3段階の計8段階に分けていました(下から順にJ1、J2、L1、L2、L3、M1、M2、M3)。J1からJ2の昇格については、一定年数が経過すれば全員昇格できるようなハードルとしていました。
一方、J2からL1への昇格については、それなりのハードルが設けられており、2~3割程度の社員はJ2のまま定年を迎える、といった状況でした。
そして、J2の中には「①将来有望で非常に優秀な社員」「②L1には上がれていないが、長年の経験が重宝する社員」「③ルーティンを安定的にこなしてくれてはいるが、パフォーマンスが決して高いとは言えない社員」等といった具合に、幅広いレベルの人材が混在する形となっていました。
つまり、「J2の中でもレベル差を言語化できる」という状態にありました。

 
こうした状況の中で制度改定を行ったのですが、結論としては、「J2の等級をさらに細分化するということはあえてしない」ということに至りました。理由としては、次の2つが挙げられます。

 
理由1:上記の①のような社員は早期にL1に昇格させており、J2にいるのは一時的であり、それ自体はさほど問題ではないため

理由2:上記の②・③のような社員も人員数確保のためには必要であり、その人たちの処遇が少しずつでも上がるようにしておくため
(等級を細分化すると、従来のように上がり続ける仕組みとすることが困難になる)

 
こうした結論に至ったのも、「技術の習得にはそれなりの時間がかかるため、オペレーション層の人材であっても簡単に代替が効かない」という点は大きいと言えます。

 

今回取り上げた事例のように、適切な等級段階数の設定は、一筋縄ではいかないケースも多くあります。「自社の等級制度がどうもしっくりこない」と感じられる方は、思わぬ所に落とし穴がある可能性もありますので、我々のような専門家にご相談いただいてみるのも良いかと思います。