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【本阪】その地域手当はなぜ存在しているか?②

前回は、地域手当の目的について整理しました。「その地域手当はなぜ存在しているか?①」をお読みでない方は、まずはそちらをご確認ください。今回は、地域手当の運用面で注意すべき点について整理します。

 

3.運用面で注意すべき点

地域手当の運用面での注意点の一つに、人事異動が多い場合は扱いに困るということが挙げられます。

例えば、A地域とB地域には地域手当差が2万円あり、AからBに異動させるだけで賃下げ感が発生してしまう。これを避けたいために、異動後も2万円調整給で穴埋めする…という本来の目的からずれた事態に発展してしまうこともあるようです。

制度上、その差額を調整給で支給する必要はないとしていても、気持ちよく異動してほしいためにルール外の運用を適用してしまう。そうなると、逆にB地域内に勤務する社員との不公平が新たに発生していると言えるわけです。

 

そうした異動に伴う地域手当減額分の調整給を、激変緩和措置として1年~数年にわたり減額させ、徐々にあるべき賃金体系にする手段も講じられますが、こういった事象が頻繁に起こるのであるならば管理が煩雑になりますし、地域手当の意義について再検討が必要になるのではないでしょうか。あるいは、社員区分を分けて全国異動が発生する社員には地域手当最高額相当の手当を付与しておき、その代わり地域手当は支給しない等、別の策が必要になるかもしれません(こうした区分を設けることもメリット・デメリットはありますが、ここでは割愛します)。

 

運用面での注意点の二つに、同一労働・同一賃金(パートタイム・有期雇用契約労働法)の観点からしても、正社員だけにこの手当を支給していて、非正規社員には支給しないというのは不合理な要素にもなり得ることがあげられます。

特に、目的①のような生活給的な地域手当とする場合、「同じエリアで生活しているのに、なぜ正社員だけ生活保障があるのか」をはっきりと説明ができるかといえば、そうでないケースもあるでしょう。そういったことを踏まえると、安易に正社員の生活保障だけにフォーカスした制度設計は今後益々注意が必要ですし、場合によっては早急に改定が必要かもしれません。

 

自明のことではありますが、賃金制度上において必ずしも地域差による不公平感を企業が担保しなければならないと決められているものではありませんし、地域の賃金相場に比例した給与モデルにしなければいけないということもありません。

うちはどこで仕事をしても同じ給料という考え方も当然問題ありませんし、「同じ企業であるから、仕事に対して平等な賃金だ」という理屈の方が、社員にとっても腑に落ちる場合もあるでしょう。どの地域でも外部競争力的に問題がなければ、その方がシンプルで良いかもしれません。

また業態によってはテレワークがさらに進み、全国どこからでも働けるという選択肢を社員に与えるならば、こういった「地域」に焦点を当てた概念は今後変化していくかもしれません。

 

いずれにしろ、採用方法や配置・異動をどのように行うか、社員に今後どのような働き方を選択できるようにしたいのか、総額人件費の観点から最適な配分か、会社の賃金のポリシー「何に対して賃金は支払われるのか?」をどう見せたいかによって、手当支給の有無・支給条件・支給額は変わると考えます。

他社やトレンドがこうだからウチもこうする、という安直な考えで検討しないよう留意いただけると、自社に合った、後々にも運用しやすい制度となるでしょう。

 

 

執筆者

本阪 恵美 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、農業者・農業法人向け経営支援、新規就農支援・地方創生事業に8年従事。自社事業・官公庁等のプロジェクト企画・マネジメントを行い、農業界における経営力向上支援と担い手創出による産業活性化に向け注力した。業務に携わる中で「組織の制度作りを基軸に、密着した形で中小企業の成長を支援したい」という志を持ち、新経営サービスに入社。企業理念や、経営者の想いを尊重した人事コンサルティングを心がけている。