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【本阪】資格に関する報酬と金額を論じる前に①目的編

社員の保有・取得する何らかの資格に対し、手当や一時金を支払うという会社もあるでしょう。社員から見ても資格手当・一時金制度は“条件と金額”が明確で分かりやすく、関心も高くなります。今回は、社員がもつ資格に対する報酬の在り方について、整理をしていきたいと思います。

 

そもそもですが、一般的に資格に対して報酬を支給する目的は何でしょうか。

 

 ① 業務上必要性が高く、その専門知識を活かして業務を行ってもらう必要がある(宅地建物取引士・建築士・各種施工管理技士・薬剤師・介護福祉士…etc)

 

 ② ①ほど必要性があるわけではないが、社員に能力向上として努めてほしい、ある種自己啓発促進目的で支給

 

の2つに大別できるかと思います。

 

①に関して言えば、資格を持っていない人より難易度が高い仕事に従事できる他、専門的な知識・知見や公的免許があることで、発揮されるパフォーマンスが一定あると期待されます。
また、その資格保有者が世間一般にも希少性が高く、賃金相場が高い場合、外部競争力を考慮して手当額を数万単位で設定し、高めの報酬水準を設定することが出来れば、優秀な有資格者を自社から流出させない対策となるでしょう(会社を辞める理由は報酬だけではないとはいえ、最低限の対策として)。

 

ただ、②に関して言えば、業務上で必要性が低いならば、月給で支払う必要性は必ずしも無いといえます。
直接的な方法であれば一時金(祝金・奨励金)として資格取得した際に支払う方法も、多くの企業でとられています。手当よりもまとまった金額ですので、社員の方からすれば分かりやすい目標にもなるでしょう。また、会社としても月々の費用にせずに、払いきりで済むことがメリットです。
他にも、業務関連知識を習得する姿勢(その習得した知識を業務で活かすことや、社内教育等で還元されていると尚良し)を、“評価や昇格の際のプラスポイントにする“、というように、「間接的に処遇決定に活用するということを、社員に明示する方法」も考えられるでしょう。

 

尚、①の場合であっても、資格手当にする必要があるかどうかは会社判断です。一時金とすることも出来ますし、基本給に入れて設定してしまうことも何ら問題ありません。
その資格がないと業務が出来ない、その資格を持つ人は他の社員よりも難易度が高い仕事に従事できる、そういう業務ができる人を更に増やすことが会社の成長に必要という場合には、“月給でその他の社員と配分差を設ける”ために、手当として支給することも有効でしょう。

 

このように、何が何でも資格に対して報酬を支給する必要はありません。目的によって、全体のバランスを見ながら処遇の決定方法を柔軟に考えられると良いでしょう。

 
次回では、特に月給として支払う場合の資格手当の注意点について触れたいと思います。
(次回へ続く)

執筆者

本阪 恵美 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、農業者・農業法人向け経営支援、新規就農支援・地方創生事業に8年従事。自社事業・官公庁等のプロジェクト企画・マネジメントを行い、農業界における経営力向上支援と担い手創出による産業活性化に向け注力した。業務に携わる中で「組織の制度作りを基軸に、密着した形で中小企業の成長を支援したい」という志を持ち、新経営サービスに入社。企業理念や、経営者の想いを尊重した人事コンサルティングを心がけている。