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【小田原】人事制度をボトムアップで作り上げる

今回は、人事制度をボトムアップでつくりあげ、社長に提案し、導入した事例をご紹介します。

 

まずは、ご支援先の企業イメージを記載します。(接点を持った当時)

 

・社員数約100名。経営者の優れたリーダーシップもあり、事業・人員を急拡大中。直近数年で50100名の増員と事業所の増加が想定される。

・人事制度はなく、賃金に関しては社長が全て決定している。

・他の経営幹部の方々は「会社の規模も拡大しており、社長が全社員の仕事ぶりを十分に見るのは難しいのではないか」「給与の決定方法が不明瞭であることに社員が不満を抱いており、解消すべきではないか」「財務的観点から見たときに、現状の管理方法のままで将来的な人件費管理も適切にできるか心配だ」と考えており、制度導入の必要性を感じていた。

・反面、経営者は今後も従来通りの賃金の決め方で問題ないと考えておられた。

 

 以上のような状況を踏まると、賃金制度の導入はハードルが高いと考えられました。そこで、フット・イン・ザ・ドアの精神で、まずは評価制度の導入を進めてはどうだろうかと、先方の幹部の方々は社長と話をされました。その結果、評価制度の導入には社長から前向きに同意を頂けたので、評価制度を導入しました。

導入後、運用が軌道に乗り、評価者がつけた評価結果に対して、社長も一定の信頼を置けるようになりました。その段階で賃金との紐づけを社長に提案すると、「まずはやってみるか」と合意を得られ、賃金制度も導入するに至りました。

 

社長に賃金制度導入の意思決定を頂けたポイントを振り返ると、「①評価に対する適正さが担保された事」「②人件費管理上のメリットを伝え、理解してもらえたこと」の2点が挙げられます。

①については、先ほども触れましたが、「評価を管理職に任せても、適正な評価が出来る」と実感いただいたことで、導入に向けてのハードルが大きく下がったように思います。

②については、「現行ペースでの人件費上昇は、業績次第で財務を圧迫する可能性が高いこと」「制度導入により、人件費および個別の賃金の上がり方が管理しやすくなること」を説明し、理解を得られ、決定打となりました。(前者については、売上・付加価値・営業利益・人件費の将来推移を複数想定した財務シミュレーションを行い、イメージを掴んでいただきました。)

 

以上、事例として挙げたものの、実際には上記のような状況の中で、ボトムアップで制度導入を実現するのは難しいと思います。ただ、ポイントを押さえ、こうしたプロセスを踏むことで導入できる可能性を高められるかもしれません。1つの事例として、少しでもご参考いただければ幸いです。

執筆者

小田原 豪司 | 人事戦略研究所 シニアコンサルタント

大学で経営学全般を学ぶなか、特に中小企業の「ヒトの問題」に疑問を感じ、新経営サービスの門をたたく。
企業の「目的達成のための人事制度構築」をモットーに、顧客企業にどっぷり入り込むカタチで人事制度策定を支援している。