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【森谷】第5回:人材育成を“押し付けない”(2)

(第4回を見ていない方は、まずそちらをご覧ください)

 

最近、マズローの欲求段階説は、非常によくできていると感じます。

 

人は、生命維持の欲求(第一段階)が満たされると、より安全な状態を求め(第二段階)、次に社会とつながっていたいという欲求が芽生え(第三段階)、それが満たされると社会に承認されたいという欲求が芽生える(第四段階)。これらが満たされて初めて、自己実現の欲求(第五段階)が芽生えるそうです。

 

何が言いたいかと申しますと、「自己実現の欲求」は最後であり、それ(成りたい自分)をいきなり求めても、人がそれを持つのは難しいということです。

 

人材育成の現場では、よく、イチロー選手・本田圭佑選手・石川遼選手の昔の卒業文集が話題になります。「小さいときから、大きな夢を、より具体的に描くことが必要だ」という、あれです。

が、これらは世界的に活躍しているプロスポーツ選手のものであり、具体的な夢を描きながらも陽の目を見なかった人は多いはずですし、流れに身を任せているうちに陽の目を見た人も多いはずです。

 

本当に社員の成長を願うなら、第四段階の欲求までをしっかりと満たす(あるいは満たされていると自覚させる)ことが必要なのかもしれません。

 

今、企業では「働き方改革」という旗の下、就業条件の整備が行われています。長時間労働の是正や、非正規社員の処遇改善など、ややネガティブな面に焦点が当てられがちですが、「自己を実現するための、第一段階~第四段階の整備」にスポットが当たるような働き方改革ならすばらしいですね。

執筆者

森谷 克也 | 人事戦略研究所 所長

企業の成長を下支えする人事戦略の策定・活用が図れるよう、
経営計画・人事システム・人材育成を一連で考える
人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。
企業支援においては、①企業風土(社風、経営理念など)を大切にすること、
②中期的視点(業界環境、管理者レベル等)を持つこと、
③そして何よりシンプルで分かりやすいことをモットーとしている。