2040年問題?予想される人口構造変化
2023年は人的資本経営(人的資本の情報開示)の取組み元年ということで、トレンドワードとして様々な媒体でも取り上げられていました。人的資本経営では、「社員を資本と捉えて積極的に投資し、その価値を最大限に生かすことで、企業価値を高めていく経営が求められる」とされています。そして、その戦略・取組み・目標(指標)などを、投資家向け情報として有価証券報告書で開示することが上場企業では義務付けられるようになりました。
取組み実態や、本気度は各企業千差万別かもしれませんが、開示義務が課されたことによって、今一度“人に投資し、活かす経営”に関心が寄せられ、向き合った年だったのではないでしょうか。
“人(社員・従業員・労働者)”にまつわる外部環境変化
2024年以降では、そうした“人”にまつわる外部環境変化として、どのようなことがあげられるでしょうか。
一つには、2025年問題・2040年問題と取り上げられているように、日本は“超高齢化社会”“労働人口減少”に本格突入していくと言われています。
高齢者割合が増加すれば、医療費や介護費は増大し、老齢年金の支出も大きくなります。そのため、現役世代の社会保障費負担増、社会保障制度の見直しが求められるという問題があげられています。これによって、企業も当然ながら社会保険料負担増になります。
※なお、社会保険は過去と比較してすでに緩やかに負担増になっていますし、2024年10月からは従業員数 50人超規模の中小企業でもパート・アルバイトで要件を満たす社員の被用者保険の適用拡大も予定されているなど、見直しは進められています。
また、コスト的な話に留まらず、労働人口は減っていく中で、直接的担い手となる医療・介護人材も、需要に対し供給不足が加速すると言われています。そうした背景もあり、現役世代は働きながら家族の介護をする“ビジネスケアラー”が増加すると言われています。子育てと仕事の両立が落ち着いても、介護と仕事の両立が求めれることになり、外部の介護支援を借りたくても、その担い手が不足しているとなれば、仕事をセーブし自ら介護する社員が増える、ということが想定されます。
こうした社会問題を踏まえると、どのような産業であっても、フルタイム人材かつ、会社の業務・異動命令に柔軟に対応できる人材確保は、益々ハードルが高くなるかもしれません。
今後、求められる企業の対応
超高齢化社会、労働人口減。加えて、前述したように、フルタイムで居住・時間に制約無く、会社の命に柔軟に応じて働ける人材確保は益々難易度が上がります。
既存(過去)の採用・教育・人材活用の在り方や価値観は、外部環境に合わせて見直さないといけないフェーズに、緩やかに移り変わっていっているかもしれません。
こうした中で、企業が経営を持続するための取組施策オプション例を、カテゴリ問わず列挙してみると、以下のようなことが考えられます。
・人員が減少しても生産性を落とさない取組み強化(個々の能力・生み出す付加価値向上)
・人がやるべき仕事、そうでない仕事の切り分け+省力化やDX推進
・社員が柔軟に働きやすい業務体制への見直し、制度の整備
・健康なうちは、年齢問わず働ける制度の整備
・人手不足の中でも、更なる採用競争力の向上
・外国人雇用の推進
・一部業務の外注・業務委託への切り替え
…など
日本の人口構造の変化は、緩やかに徐々に現実になるでしょう。都市・地域別で見ると、すでに人口構造変化が急加速している地域もあるでしょう。また、その変化に伴い、税・社会保障、法律も見直されることは必至で、企業経営や社員の働き方に影響が与えられることは、避け難い事象だと言えます。
だからこそ、単に悲観するのではなく、起こり得ることは想定の上で、戦略を描き、どのような策を講じるべきかを検討し、スモールステップでも取組み始めることが大事ではないでしょうか。
(参考)
厚生労働省「我が国の人口について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html
厚生労働省「2040年を展望した社会保障・働き方改革について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21483.html
総務省「自治体戦略2040構想研究会 第一次・第二次報告(概要)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562116.pdf
経済産業省 第1回企業経営と介護両立支援に関する検討会
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kaigo/kaigo_ryoritsu.html