【岡本】メンター制度導入のすすめ
◆メンター制度とは?
メンター制度とは、新入社員や若手社員に対して特定の指導役を設ける制度です。指導する側を『メンター』、指導される側を『メンティー』と呼び、1人のメンティーに対して1人のメンターが付きます。メンターは業務に関する指導だけでなく、メンティーの悩み相談を受けるなどメンタル面のケアも含めてサポートを行います。今回は、このようなメンター制度を導入することで期待される効果や運用上のポイントについて解説します。
◆期待される効果
まず、メンター制度を導入することで期待される代表的な効果は次の通りです。
・新入社員や若手社員の離職要因の軽減
若手社員の離職理由に関する調査データ※1では『職場の人間関係が悪い』『肉体・精神的な負担』が理由として挙げられており、『労働条件(休日や賃金など)への不満』の次に多い回答となっています。ほとんどの場合は気軽に上司や先輩へ悩みを相談できず(≒人間関係が悪い)、一人で悩みを抱え込んでしまい(≒精神的な負担)、悩んだ末に離職を決断してしまっていると考えられます。メンター制度ではメンターは若手社員の相談役としての役割も担う為、仕事上の悩み相談や不満の解消としての役割が期待されます。これによって先のような離職理由(人間関係が悪い、精神的な負担)への対策となり、若手社員の離職要因の軽減に繋がります。
・指導者としてのメンターの育成
メンターはメンティーの相談に乗り、助言や指導を行うことで部下育成の役割を一部担います。その為、メンターにとっては育成指導の難しさを体験できる良い機会となり、メンティーへの指導方法や助言内容を考えることがメンター自身の指導者としての成長に繋がります。
・部署間コミュニケーションの促進
メンター制度においてはメンターを他部署から選ぶのも一案です※2。これにより、実務において利害関係が無いほうが気軽に相談しやすいという理由に加え、他部署の先輩をメンターとすることで、他部署の仕事内容を聞ける機会となり他部署の理解が深まります。また、実務においては他部署に連絡を取りやすい人(メンター)がいるなど若手社員が他部署へのコミュニケーションを取りやすくなる効果が期待されます。
◆運用上のポイント
次に、メンター制度を運用するにあたっての主なポイントを挙げます。
・メンターの選定方法
メンターを選ぶ際には、年齢や勤続年数、経験内容やメンター制度への協力姿勢などを総合的に判断します。例えば年齢が離れているとメンティーが話しにくく感じたり、経験年数が浅過ぎるとメンターとして伝えられる内容が薄くなってしまったりすることが懸念されます。これらを考慮した上で、指導経験を積ませたい、将来的に役職に就かせたいなどと考えている社員を選ぶことが良いでしょう。
・ペアの決定
どのようなペア組をするかも重要です。例えば性別は同性にした方がお互いに話しやすくなります。また、学生時代の専攻が近い、境遇が近いなどの共通要素を考慮するとメンティーからすればメンターが自身の将来モデルとしてイメージしやすくなります
・運用環境の整備(上司の協力・人事の支援)
メンターには指導や相談の時間を作るなど一定の負担がかかってしまいます。そのような場合には上長がメンターの状況を考慮した業務の差配を行うことが望ましいでしょう。また、メンターがメンティーの指導方法について悩むこともある為、上長や人事部へ気軽に相談でき体制作りが必要です。
・振り返りを行うタイミングの実施
メンター制度におけるペア組は1年間のような期間限定で行うことが一般的です。したがって、期間が終了した際にはメンター・メンティーが実施した結果どう感じたかなどの振り返りを行うことで、生の声として制度の改善点を人事部が把握することができます。この意見を次年度以降のメンター制度に反映させより良いメンター制度作りに繋げます。
以上の内容を踏まえて、メンター制度の導入を検討してみて下さい。メンター制度はメンターとメンティーのみならず、上長や人事部も協力して作り上げる制度になります。したがって制度導入において仕組み作りも重要ですが、効果的に運用する為には社内の協力体制を整えることを意識して進めてください。
※1 参考:若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(労働政策研究・研修機構)
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2020/221.html
※2 メンターを同一部署内から選ぶケースもあり、OJT指導役との兼任など企業によってはメンター制度の運用方法は異なります。今回は他部署からメンターを選ぶ前提で記載しております。