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【小田原】これからの時代の人材確保の在り方を踏まえた人事制度策定②

前回は、これからの時代における人材確保の在り方と、考えられる対応方針についてお伝えしました。今回は、人事制度への具体的な落とし込み方について、お伝えしていきます。

 

前回ご提示した考えられる対応方針としては、次のようなものでした。(下図も参照)

 ・③のような人材に対しては、仕事や時間の制限を設けてプライベート重視の志向を充足できる環境を用意する代わりに、やや賃金を低めに設定する

 ・上記で生み出した原資を①・②のような人材の処遇へと回し、より優秀な社員の確保・定着に活用する

 

【人材ポートフォリオと志向の整理例】

 

 

以上の方向性を人事制度で実現するには、限定正社員制度の導入が効果的です。限定正社員制度とは、(1)勤務条件を制限し、(2)それに対する処遇差 を設ける  仕組みのことです。上手く活用することで「採用強化・定着率の向上」「人件費の抑制・効果的な再配分」が実現できます。

「勤務条件の制限」については、勤務地の制限、職種の制限、時間の制限などが一般的に考えられます。また、「処遇差」 については、賃金差(給与・賞与)、諸手当、昇進・昇格上限、退職金、などが対象となります。部分的に差をつけることも可能です。

設計・運用を成功させるためには、「制限・免除される内容」と「諸々の処遇差」におけるバランスが取れているかどうかが重要です。例えば、「全国異動のある総合職」と「事業所間異動のない地域限定社員」を設けた場合、異動が頻繁な場合はより大きな処遇差を設け、異動の頻度が少ない場合は処遇差を大きくしすぎない、といった具合にバランスを取っていきます。以上のような観点を検討の上、以下のような形で整理すると良いでしょう(以下は比較的オーソドックスな例です)。

 

【オーソドックスな限定正社員制度】

 

先ほどはオーソドックスなケースを挙げましたが、昨今の人材の特性を踏まえて、人材確保のためにより踏み込んだ限定社員制度を策定した事例も出てきているため、ご紹介します。こちらの事例では、「多様な人材の受け入れを行っていかなければ、自社のような地方の中小企業では人材不足に陥っていくだろう」との問題意識から、制度設計を行いました。「年間残業時間(3タイプ)」×「教育・訓練の在り方(2タイプ)」の計6タイプに分類し、それぞれの志向に応じた働き方を設定しました(一定の処遇差あり)。

 

【「多様な働き方の実現」により踏み込んだ限定正社員制度の設計例】

 

これからの時代の人材確保を見据えると、このような人事制度の在り方も視野に入れて検討していく必要性は、今後ますます高まるでしょう。

 

執筆者

小田原 豪司 | 人事戦略研究所 シニアコンサルタント

大学で経営学全般を学ぶなか、特に中小企業の「ヒトの問題」に疑問を感じ、新経営サービスの門をたたく。
企業の「目的達成のための人事制度構築」をモットーに、顧客企業にどっぷり入り込むカタチで人事制度策定を支援している。