【岡本】自社の風土を踏まえて人事制度を設計する
人事制度を設計する際、
『基本給の構成をどうするか』
『賞与に対する評価の反映はどの程度とするか』
『新制度へ移行する際に、既存社員の給与をどのように移行するか』
など多くの意思決定が求められます。
今回は、このような意思決定において、『自社の風土』を判断材料とする考え方を解説します。巷の制度構築解説本などを読んで知識や手法を理解するだけでは他社から借りてきた制度となってしまいます。しっかりと自社の風土を生かした制度設計となるように3つのステップに分けて述べていきたいと思います。
STEP①自社の風土はなにか
ここでいう風土とは、企業が大切にしている価値観を指します。この風土というものは、言語化しにくい部分もありますが、なんとなく肌で感じることができるものでもあります。
例えば、『チャレンジする人を応援する風土』『チームワークを重視する』『個人でのキャリアップを尊重する風土』など様々です。
私たちコンサルタントのような社外の人間からすると、会社ごとの風土の違いを認識しやすいですが、社内からは気づきにくい部分かもしれません。また、経営者や幹部社員と一般社員では感じている風土が異なる場合もあります。
このような自社風土について、確認する方法はいくつかあります。
A 転職者に聞いてみる
⇒入社して間もない転職者であれば、前職との比較など、社内では気づけない部分について敏感に感じ取っている可能性が高いので、その人たちに直接聞いてみることが一案です。
B 社内にアンケートを取る
⇒明確に言語化できなくても、多くの意見を集約すると一つの傾向を見ることができます。
C 外部の風土診断サービスを利用する
⇒弊社などの外部機関では組織風土を診断するサービスなどがあります。コストは掛かりますが、診断結果を得るだけでなく、組織内のギャップを認識することができ、問題に対して改善策の提案までしてもらえるのが利点です。
ここで紹介した手法の中で、AとBについて注意すべき点は、少人数の意見の場合では偏った傾向となる可能性があります。これは避けるために、できるだけ多くの意見を集めることがポイントです。
STEP②目指すべき風土を設定する
現在の風土が確認できたならば、次に目指すべき風土を設定します。
今の会社の経営状況や業界の動向、現在の風土が自社に与えている影響など多くの観点から目指すべき風土を見定めることになります。
現在の風土を変化させる必要がない場合は不要ですが、
例えば、今の『安定志向』の風土ではこの先、業界では生き残れないなどの課題感を持っている場合には、『チャレンジ促進』など、今と異なる風土を設定する必要が出てきます。
目指すべき風土は、制度設計においては大切な判断軸となる為、しっかりと時間をかけて、自社の経営戦略などと紐づけながら設定することをお勧めいたします。
STEP③風土を促進する/阻害しない制度構築
目指すべき風土を軸に、各制度を設計していきます。
制度の構築や改定において、大切なのは『目指すべき風土にどのような影響を与えるか』を考えることです。
例えば、『チャレンジを促進する風土』を設定した場合には、年功的な賃金制度や『メリハリのない』『ミスによって減点される』評価制度は、目指すべき風土を阻害する可能性が高いといえます。逆に、目標管理制度を導入し、評価による賞与へのメリハリを大きくするなど、チャレンジすることを促進し、成功した時にはさらに+αがあるような制度設計であれば、風土を促進していると言えるでしょう。
このように制度設計段階では、目指すべき風土を阻害していないか、もしくは促進しているかの視点で確認することをお勧めします。
『自社の風土』というものは、前にも述べたように『見えているようで見えていないもの』だと思います。だからこそ、しっかりと確認することが大切ですし、風土の変更を考えるなら、明確に設定する必要があります。もし、風土を踏まえずに制度設計を進めてしまうと、せっかくの新制度が思ったように機能しないなどの問題が発生する可能性が高くなりますので、制度設計の際には、『自社の風土』について、しっかりと考えることをお勧めいたします。
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