管理職の「罰ゲーム化」 ①
最近、「管理職の罰ゲーム化」というワードをよく耳にします。
かつての管理職は、キャリアにおける重要な到達点・通過点であり、社員のステータスの一つでもありました。
しかし最近では、筆者のコンサルティング先においても、「若手・中堅社員が管理職になりたがらない」「期待していた人材に管理職を打診したら拒否された」「しかたがないので、役職定年制度を撤廃したほうがよいか」といった会話が増えています。
これは、単なる世代の価値観の変化でしょうか?
管理職の不足は、企業運営において極めて重要な課題です。本稿では、管理職の罰ゲーム化の要因を整理しながら、企業が打つべき施策を考えてみます。
1.管理職の罰ゲーム化の要因
①役割の高度化・複雑化
ビジネスを取り巻く環境において、不確実性が増大しています。セオリー通りの仕事の進め方が通用しなくなり、成果創出の難度は確実に上がしました。加えて、コンプライアンスやリスクマネジメント等、傍らで気にしておかないといけない要素も増えています。
また、人材マネジメントの重要性の高まりが、管理職の役割を更に高度化・複雑化させています。働き方は多様化(リモートワーク、時短勤務、副業 等)し、育った環境の違いによる世代間ギャップは大きくなり、部下のマネジメントは本当に難しくなっています。
加えて、残業規制の法制化や人手不足により、いち担当者としての成果も求められ、プレイングマネージャーとしての役割も強くなっています。
筆者も、いち管理者として、「昔の管理職は楽だっただろうな…」と思ってしまいます。こういった環境下で成果創出を求められる管理職は、確かに罰ゲームに見えなくもありません。
②役割と報酬のミスマッチ
意外と見落としがちなのが、負荷に見合った報酬制度になっていない点です。
昨今は賃上げブームですが、若手社員にばかり目が行き、管理職が置き去りになっている企業をよく目にします。筆者のコンサルティングにおいて報酬制度の再設計を行う際にも、「若手社員には手厚く。原資が余ったら管理職にも配分。」といった要望のお客様が多いと感じます。管理職は会社側の社員である、という認識を盾に、少し扱いが雑になっていると感じざるを得ません。
ただでさえ、管理職になると残業代が出ない、家族手当がなくなる(一般的な例です)といった状況において、「成果を出せば報酬に反映する」という制度設計にしている企業が多いものの、MBOを中心とした評価制度は機能不全に陥り、よほど大きな成果を出さなければ報酬に反映されない企業が多いのが現実です。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2024年)見ると、従業員数1000名以上の大企業において、課長級で年収1000万円程度、部長級で年収1300万円程度というデータがあります。管理職の役割難度は、各企業において全く異なるという事実はありつつ、これくらいの年収は提示したいところです。
③若手社員の人生感の変化
さらに近年顕著なのが、若手社員の人生観の変化です。
例えばキャリアの側面においては、自身の専門性を磨くことを重視し、好きなことを仕事にしたいという志向が高い傾向にあります。
また生活の側面においては、ワークライフバランス重視の志向により、残業を敬遠し、年間休日を重視し、プライベートの時間を確保するという傾向が顕著です。
管理職のポストに就くことで、これらが実現できなくなるという「固定観念」が存在しているのが大きな要因です。
敢えて「固定観念」と書きましたが、本来は逆です。管理職になることで、よりレベルの高い専門性に触れ、より多くの情報ソースを持つことができます。また、管理監督者であれば、労働時間等の規制の適用が除外されますので、自身の勤怠についても自由度が高くなるはずです。
こういった情報や見識がない若手社員が管理職になりたくないと思ってしまうのは、致し方ないとも言えます。
(次回に続きます)
