人材育成が空回りする理由
社員には成長してほしい!
そう願わない中小企業経営者はいないでしょう。だからこそ、コストをかけて外部研修やe-learningなどの学べる場を準備する、評価制度の見直しや1on1の導入などに力を入れるのだと思います。
では、実際、蓋を開けてみるといかがでしょうか。経営者が思い描いた理想と違った以下のような事象が現場では起こっているのではないでしょうか。
①自ら学ぶことを期待するが、物足りない
②育つと辞める、甘やかすと成長しない
③押し付けると嫌がる、与えないと不満を漏らす
本ブログでは、上記事象がなぜ起こるのかを掘り下げて考えてみたいと思います。
■自ら学ぶことを期待するが、物足りなく感じる理由
外部研修制度などの育成施策を整えた社長としては、成長に向けてハングリーに取り組む姿を期待していたと思いますが、実際そう上手くいきません。その最大の理由は、社員側のキャリア自律の欠如にあります。キャリア自律とは端的に言うと、自らのキャリアに責任を持ち、主体的にキャリアを切り拓こうと行動する姿勢です。例えば、「海外で仕事をしたい」と自身のキャリアを描けていた場合、
・海外拠点がある企業を就職先に選択する
・語学力を養うため、自ら語学スクールに通う
・どうすれば海外拠点に配属されるか、上司や人事に問い合わせる
といった具合に、キャリア(=目的)を実現するための手段を自ら選択していくでしょう。
逆に、目的がはっきりしなければ、いくら手段を提示しても行動に結びつきません。
残念ながら、多くの中小企業において、キャリア自律できている社員は少ないと言わざるを得ません。
・キャリアについて深く考えたことがない
・キャリアに関してぼんやりとしたイメージはあるが、手段と結びついていない
といった状態がほとんどでしょう。このような状態で、育成施策という手段だけを提示しても社員は動きません。むしろ、「研修をたくさん受けさせられる」といったマイナスイメージを与えるだけで逆効果です。
経営者が思い描く「成長に向けてハングリーに取り組む」姿を実現するためには、手段の提供ではなく、キャリアについて社員と一緒になって考えていく仕掛けが必要ではないでしょうか。
■育つと辞める、甘やかすと成長しない理由
「育つと辞める」のは、会社側が成長の方向性を限定していることが主な要因の一つです。 自走できる優秀な人材にとって、選択肢の狭さは自分の可能性を縛る枷となります。例えば、専門職を極めたい人に「管理職しか出世の道がない」と示せば、「ここには自分のフィールドがない」と判断し、外へ目を向けます。最新技術を学ばせても、それを活かす環境が社内になければ、「他で試したい」と決意されてしまうのも無理はありません。
一方で、「甘やかすと成長しない」のは、会社が過保護状態になっているからです。 成長に必要な環境をすべてお膳立てすると、社員は「今のままで十分」という安住感に浸り、成長に向けて自走する活力を失います。
昨今、離職防止のために業績に関わらず賃上げを行う企業も増えています。本来、賃上げは「個人の成長」と「会社の成長」の結果としてなされるべきものです。定着のためには必要な措置かもしれませんが、社員に「何もしなくても待遇が上がる」という誤ったメッセージを与えてしまえば、結果として成長を阻害する要因になり得ると理解しておく必要があります。
どちらの事象も共通しているのは、「会社が、結果として成長の芽を摘んでしまっている」という構造です。そうならないように、社員に会社の意図がきちんと伝わるような環境を整えることが必要といえるでしょう。
■押し付けると嫌がる、与えないと不満を漏らす理由
上司から自分の意思に反した一方的な指示や指導を受けると、部下は不快に思うものです。その一方で、上司が何も指示しなければしないで不満を漏らす部下もいます。この「与えられないと不満を漏らす」要因は、「誰かが答えを与えてくれる」という潜在的な依存心や甘えからくると考えられます。
「押し付けると嫌がる、与えないと不満を漏らす」という構造を打開するためには、日ごろからの対話のスタイルを変えることが必要です。具体的には、「教える・与える」から「問いかけ」へのシフトです。一見すると相手を突き放すようで冷たい印象を受けるかもしれませんが、「あなたはどうしたい?」「あなたはどう思う?」といった具合に部下本人を主体にもってくるという意味では誠実なアプローチです。勿論、いきなり問いかけると答えに窮する、言葉にならない方もいるでしょう。その際は、じっくり待ってあげる。一緒になって寄り添って考えてあげるといったスタンスが必要になるでしょう。
■社員を主役に据えたアプローチができているか?
今回取り上げた3つの事象に共通することは、「社員一人ひとりにスポットライトを当てたアプローチができているか」という点に集約されます。「社員に成長してほしい」という想いを叶えるためには、会社都合に「育てる」のではなく、社員が成長したい方向に支援することが要諦です。人材育成に注力した中小企業の皆さんは、人材育成の主役を会社から本人に入れ替えてアプローチしてみてはいかがでしょうか。
