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一次評価者の抱えるフィードバックに関する悩みを解消するには?

とある企業の評価者が以下のような悩みをお話されていました。

・フィードバック期間が短く、一人一人に十分なフィードバック面談の時間が取れない

・上司から部下の最終評価結果が知らされない
・フィードバック面談の進め方がわからず、自分の方法が適切であるか分からない

といったお話です。

適正な人事評価運用にはフィードバック面談は不可欠です。しかし、フィードバック面談を行う一次評価者にとって悩みは尽きない様子です。そこで今回は一次評価者の抱えるフィードバックの悩みを解決する方法をご紹介します。

 

【悩み】フィードバック期間が短く、一人一人に十分なフィードバック面談の時間が取れない

【解決策】一次評価者に負担を強いるスケジュールを組まない

フィードバックを実施する期間が短いと一次評価者にとって負担です。また、実施期間が短すぎると、「業務が忙しくて面談を実施できなかった」という話をよく耳にします。一次評価者の負担を軽減する、フィードバック面談の実施率を高める意味でも、ゆとりをもったスケジュールを組んでおきましょう。ここではスケジュールにゆとりがない場合の解決策を2つご紹介します。

 

解決策①:評価プロセスを効率化し、フィードバック面談にかけられる時間を捻出する

評価プロセスを効率化できればフィードバック面談にかける期間を長く取ることができます。評価プロセスを効率化する方法としては以下のようなことが考えられます。

・人事評価表の電子化・クラウド化

⇒電子化、クラウド化することで評価表の記入時間や受け渡しにかかる時間を減らします。また、評価がデータ化されることで、評価結果の集計や評価調整用の資料作成の工数削減が期待できます。

・評価フローごとのリマインド

⇒効率化と少しズレますが、期限通りに評価が終えることも重要です。本人評価や一次評価の期限を適宜リマインドすることで、評価の遅延を防ぎます。

 

解決策②:評価スケジュールの変更

効率化を行っても、フィードバック面談にかける時間が捻出できない場合は、評価スケジュールを調整し、フィードバック面談を行う時間を捻出します。具体的には、以下のような観点で、評価スケジュールの変更を検討しましょう。

1.評価開始を前倒しすることはできないか

行動評価中心の評価制度であれば、評価期間終了を待たずに評価を付け始める場合もあります。ただし、評価期間中に評価を行うという辻褄の合わない方法であることは認識する必要があります。また、成果評価や目標管理制度が中心の評価制度では評価期間終了まで業績や成果が確定しないものですので、前倒しとは相性が悪いと言えます。業績や成果の最終着地を見通した上で、短期間の前倒しで評価することは可能ですが、万が一のことを考えると基本的にはお勧めしません。

2.給与改定日・賞与支給日を後倒しすることはできないか

評価開始の前倒しも難しいとなれば、最後の手段として給与改定日・賞与支給日の後倒しが考えられます。ただ、後倒すことで社員の生活に対して影響が出る可能性があるため、社員への配慮が必要です。給与改定日・賞与支給日の後倒しは大掛かりな制度変更となる為、基本的にはお勧めしません。

 

解決策②で紹介した内容はいずれもデメリットを含む取り組みですので、採用する際には慎重に検討してください。以上の解決策①②を参考に、フィードバック面接の時間を確保することができれば、一次評価者に負担を強いるスケジュールを組まないことに繋がります。

 

【悩み】上司から部下の最終評価結果が知らされない

【解決策】一次評価者に評価結果が説明されない状況を放置しない

一次評価者に対して最終評価結果が適切に伝わらない状況を放置しておくことは、評価制度の透明性や信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。人事担当者として、上位評価者(二次評価者や最終評価者)が評価結果を伝えるように促すことは非常に重要な役割です。しかし、ただ、「しっかりと評価結果を伝えてください」というだけでは改善には繋がりません。人事担当者として、上位評価者と一次評価者間で評価結果を共有する面談を必ず実施するように促す。また、評価変更理由を口頭ではなく記録として残すためのフォームやシステムを作成し、評価結果を共有する際に明確な根拠を示す仕組み作りを行うことが効果的です。他には、人事担当者から、評価フローごとのリマインドを行い、評価業務への意識を高める取組をサポートすることも重要です。このような取り組みにより、評価者間での円滑な連携が促進され、評価プロセスにおける連携不足の改善に繋がります。

 

また、一次評価者の意識改革も必要です。人事担当者としては、一次評価者が積極的に上位評価者に働きかけ、評価結果に関する疑問や不明点を確認する姿勢を持つようにサポートすることが求められます。人事担当者として、研修や指導を通じて一次評価者へサポートを行い、上位評価者との積極的なコミュニケーションが取れるよう評価者間の良好な関係性を構築できるように導く必要があります。

 

【悩み】フィードバック面談の進め方がわからず、自分の方法が適切であるか分からない

【解決策】評価者教育を惜しまない

評価者への教育が不足していると、自信を持ってフィードバック面談を進めることが難しくなります。評価者のフィードバック能力を高めるには次の3点を評価者が理解しておくことが重要です。

 ・評価基準の理解

 ・被評価者の行動事実の把握

 ・フィードバック面談の進め方(結果の共有⇒課題の共有⇒目標の設定)

まず、評価者がフィードバックに自信をもって行うためには、評価基準と部下の行動事実を把握し、根拠のある評価理由を持っておくことが重要です。また、被評価者に上手く伝える為にはフィードバック面談の進め方を理解しておくと良いでしょう。これらを評価者に学ばせるには評価者研修や上位評価者からの指導など評価者教育を行うことが重要です。

 

一次評価者のフィードバックにおける悩みに焦点を当てて解決策をご紹介しました。もし、評価者が悩みを抱えているようであれば、ご紹介した解決策をご参考にして頂き、一次評価者の悩み改善、強いてはよりよいフィードバック面談の実施に繋げてください。

執筆者

岡本 充裕 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。