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考課者のお悩み解決② 考課者自身の評価の正当性に対する不安

人事考課者が直面する悩みの1つに、自身の評価の正当性に関する不安が挙げられます。評価に対する自信がなく、評価を行う際には不安を感じる考課者は少なくありません。そこで今回は評価に対する根拠を明確にし、評価に対する不安を小さくするための方法を3つの評価ステップに分けてご紹介します。

 

ステップ1: 評価項目の理解

まず初めに評価を行う前に、考課者自身が評価項目の定義を正確に理解しておくことが肝要です。考課者は評価項目や評価基準について理解を深め、被考課者がどのような評価項目や評価基準で評価されるのかを把握する必要があります。これにより評価の決定が考課者の主観ではなくなり、より客観性の高い評価に近づいていきます。もし考課者が評価項目や評価基準への理解を疎かにして評価を実施した場合、考課者の主観による評価となってしまいます。そのため、同じ評価項目であっても考課者が違えば評価結果も異なるということにつながってしまいます。ですので、考課者は評価項目について詳しく理解し、具体的な事例や要件について理解を深めていくことが求められます。

 

ステップ2: 日常の観察と記録

次に、考課者は被考課者の日常の行動を注意深く観察し、客観的な行動事実を記録する必要があります。さらに述べるならば記録する内容は主観的な意見ではなく、具体的な行動や成果などの客観性の高いものを記録することが肝要です。例えば、プロジェクトの進捗状況やチームとの協力、問題解決能力に取り組む際の具体的な行動を観察し記録することで、客観的な視点から行動事実を記録することができます。その際に注意すべきことは考課者の印象や感想を行動事実として記録しないことです。あくまでも記録すべきは被考課者が実際に行った行動のみであり、そこに印象などを加えてしまうと後々評価根拠を示すときに論理性や客観性が失われてしまいます。

 

ステップ3: 評価項目と行動事実の照合

最後のステップでは、評価項目と観察した行動事実を慎重に照らし合わせます。具体的な行動事実を評価項目と照らし合わせ、どの評価項目に該当するのかを照合させます。この照合を行う際には、2つの点に注意する必要があります。1つは『本人評価に引っ張られないこと』です。本人評価が高い/低い場合に大きく点数を上げ下げできない、したくないという心理が働いてしまい、結果として適切な評価にならない場合があります。また、もう1つは『考課者自身の評価の傾向』です。基準よりも厳しく評価したり、甘く評価したりするなど考課者には評価傾向がある場合があります。このような評価傾向を無視して評価を行うと評価の妥当性が下がってしまいます。このように、適切な評価の過程(ステップ1、ステップ2)を踏んでいても、最後の照合の段階を疎かにすると結果として適切な評価ではなくなってしまいます。ですので、考課者自身が上記のような点を意識して評価を付けることが必要であり、それらを継続することが客観性の高い評価に繋がります。

 

以上のように、今回ご紹介した3つのステップを踏まえて、適切な評価を行い、自身の評価に対する根拠を持つことで、評価に対する不安を小さくすることができます。難しいことではありますが、考課者は常に公正かつ客観的な立場を保ち、徹底した誠実さと信頼性を持って評価プロセスに取り組むことが求められます。考課者は自身の判断力を磨き、公平かつ客観的な評価を行うことが、評価を通じて被考課者の信頼を得ることに繋がるでしょう。

 

執筆者

岡本 充裕 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。