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年間休日日数・有給休暇取得率の平均とは?世間動向をチェック!

就職活動をしている学生や、転職者が応募する会社を選ぶ際、賃金以上に重視している条件の一つが「年間休日」です。今回は、どの程度「休日」が重要視されているか。企業における「年間休日日数」や「有給休暇取得」の平均はどの程度なのか、統計をもとにチェックしていきます。

※本記事は、20237月時点の記事です

 

労働者側の視点①:転職者は、 “労働条件”を重視する

厚生労働省で行った『令和2年転職者実態調査』では、全ての年齢階層の総数で転職者が現在の勤め先を選んだ一番の理由として、10項目のうち「仕事の内容・職種に満足がいくから」(18.8%)、「自分の技能・能力が活かせるから」(18.3%)、に次いで3番目に「労働条件(賃金以外)がよいから」(13.5%)となっていました。

これは「賃金が高いから」「会社の将来性があるから」等といった項目比べても高くなっています。なお、転職者が多い30代では、当該項目が1位(20%前後)となっています。

注:調査票上「労働条件(賃金以外)」という記載のため、「労働条件(賃金以外)」=「年間休日日数」と特定しているものではありません。「労働条件(賃金以外)」には、所定労働時間や夜勤有無など“勤務時間(時間帯)”に関すること、完全週休2日制や年間休日日数は十分か、土日が休みか/シフト制か、など“勤務日・休日全般”のこと、その他育児休業等からの復帰サポートや独自の福利厚生や、研修制度が充実しているかといった“福利厚生全般”が含まれていると推察されます(転勤有無は別項目にあるため、勤務地等条件は別)。

 

労働者側の視点②:就活大学生も、“休日・休暇”は就職先選びの上位要素の一つ

次に、新卒採用の対象となる、就職活動を行う大学生の意識はどうでしょうか。

(株)マイナビが実施している『2024年卒大学生就職意識調査』では、行きたくない会社の条件に「ノルマがきつそう」「転勤が多い」「暗い雰囲気」に次いで、「休日・休暇がとれない(少ない)会社」が、11項目中4番目に高い項目として選ばれていました。

 

会社選びにおいて、一定の休みが確保されている会社なのか、仕事と私生活がバランスよく両立できそうかということは、労働者全般にとって比較的重要視されているポイントになるようです。転職者・新規学卒等の就職活動においては、当然希望する職務につけるか、賃金条件も、社風・会社の成長性も意識する点ではあると推察されますが、それと同時に「年間休日等労働条件を、企業選びの足切り条件にしている」ということも考えられます。

 

世間動向①:直近の傾向~年間休日日数の平均・割合~

では、休日日数は世間一般ではどの程度でしょうか。

厚生労働省が行った『令和4年就労条件総合調査』を見ると、年間休日総数の1企業平均(企業規模計)は107.0日、労働者一人平均は115.3日(企業規模計)となっています。

なお、1企業平均年間休日総数は企業規模が大きくなるほど多くなり、300999人規模企業では平均114日、1,000人以上企業規模では平均115.5日となっています。

また分布でみると、年間休日総数階級では「120日~129日」が最も多く30.2%、次いで「100日~109日」が29.6%、「110日~119日」が20.6%となっています。1000人以上の大規模企業であれば、「120日~129日」が51%を超えており、“120日以上”が大規模企業のスタンダートであると言えます(週2休×54週=104日+国民の祝日16日=120日)。

厚生労働省『令和4年就業条件総合調査』

 

世間動向②:経年の変化~年間休日数は増えている?~

上記で取り上げた統計を5年前の「平成29年調査」、10年前の「平成24年調査」と比較すると以下表の通りです。

厚生労働省『令和4年就業条件総合調査』『平成29年就業条件総合調査』『平成24年就業条件総合調査』より

 

1企業平均年間休日総数でみると、大きく変わりありませんが(むしろ直近では減っている)、労働者1人平均年間休日総数は2日増えています。

また、分布でみると年間休日総数が「120日~129日」となっている割合が過去10年前より増えており(24.7%⇒30.2%)、「100日~109日」となっている割合が減っています(36.1%⇒29.6%)。経年でみると、流れとしては労働者一人の休日は増え、休日数を増やした企業も増えているように見て取れます。

 

世間動向③:年間休日日数の産業別の傾向は?

同じ統計データで、産業分類別に結果を表示しているのが「平成30年調査」までとなりますが、以下表の通りです。

厚生労働省『平成30年就業条件総合調査』

 

傾向としては「運輸・郵便業」、「卸売・小売業」、「宿泊業・飲食業」、「生活関連サービス業 娯楽業」が平均よりも下回る100日前後の年間休日総数となっています。消費者にサービスを提供する産業分類で、年中無休で営業しているケースもあるため、こうした傾向になっていると推察しますが、それでも120日以上の休日日数を定める企業が無いわけではない、ということも見て取れます。

 

世間動向④:有給取得の実態~平均取得日数10.3日、取得率58.3%~

厚生労働省『令和4年就業条件総合調査』

 

なお、過去20年の取得率は5割程度となっており、過去と比べると直近令和4年の58.3%は過去最高数値となっています。これは、働き方改革の働きかけで、2019年(平成31年)4月からすべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の有給取得が義務となった(労働基準法第39条第7項)ことや、直近2~3年はコロナ禍でやや稼働が落ちている等の事情から、取得をさせていたことも取得率上昇を後押ししたと推察されます。

 

まとめ

産業によってバラツキはありますが、世間動向をみると働き方改革の流れもあり、年間休日数を増やす企業も増え、外部環境要因も大いにある可能性があるものの有給取得が促進されているようです。
これらを踏まえると、令和4年時点として一つ目安を持つならば、年間115日(週2休+10日程度)+有給消化5割以上、勤続年数にもよりますが総じて125日前後休みが取れる企業が標準的ライン、年間休日120日以上(週2休+祝日16日間分)+有給消化6割以上、総じて135日前後休みが取れる企業が魅力的なラインといえるでしょう。

 

休日数を他社に劣らない程度に確保し、有給取得率を向上させ、働きやすい魅力ある環境を創出していくことは、人員確保のためにも、賃金・評価等制度と同等に重要な検討論点です。

そうは言っても、月給制では単純に人員・賃金水準を変えず所定日数・所定労働時間は減らすことになると、時間単価は上昇しますし(すなわち、残業単価が上がる=残業時間が変わらなければ残業代が増える)、仮に減らした日数分を法定外休日として出勤させるなら、所定日数を減らした意味がなくなります。それが結局週40時間を超過した勤務となれば、いずれにしても残業代を支給する必要性があり、人件費が益々増えるばかりとなります。

また、日給制等の会社では、休日だけを増やしてしまうと、休日が多い月は賃金が下がるなど不利益感が出るため、従業員にとって有利改定にならないことから、賃金ベースアップも含め検討範囲となり得ます。こうしたこともあり、休日数変更は容易には踏み出せずに悩ましいものです。

 

過剰な休日数にする必要性はないかもしれませんが、長年惰性で年間営業日が決まり、見直されておらず、明らかに同業と比較して休日数が少なく、求人を出しても中々応募が集まらない、社員からの不満の声が上がっている…といった問題認識がある会社は、是正すべき課題と捉える必要性が高いでしょう。

まずは他社並みの休日を確保することありきで、その為にできることの施策(例:業務標準化やシフトの在り方を見直す、業務効率を向上し社員の待遇を下げずに休日を増やす方法を探すなど)を考えていくことが、望ましいでしょう。

執筆者

本阪 恵美 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、農業者・農業法人向け経営支援、新規就農支援・地方創生事業に8年従事。自社事業・官公庁等のプロジェクト企画・マネジメントを行い、農業界における経営力向上支援と担い手創出による産業活性化に向け注力した。業務に携わる中で「組織の制度作りを基軸に、密着した形で中小企業の成長を支援したい」という志を持ち、新経営サービスに入社。企業理念や、経営者の想いを尊重した人事コンサルティングを心がけている。