採用できないのは賃金水準のせいなのか
近年、企業様のお悩みで非常に増えてきているのが、「新卒・中途に関わらず、採用ができなくなっている」という内容です。そして、人が採れない原因として、「賃金が低いことが一番の原因ではないか」といった仮説を立てられる企業様が非常に多いと感じます。果たして、本当にそうなのでしょうか。
結論から申し上げると、筆者は「賃金は求職者に足切りされないためにも非常に重要であるものの、それ以外の要素も充実させなければ採用にはつながらない」と考えます。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグによって提唱されたモチベーションに関する理論「二要因理論」においては、仕事への満足度は「衛生要因」と「動機付け要因」の2つの要因の関係性によって成り立つとしています(詳細は以下参照)。
特に最近よく出会うのが、「定着率は良いのだが、採用ができない」という企業様です。こうした企業様で、賃金が低いから採用できないという仮説を立てられることも多いのですが、「二要因理論」を踏まえると、「定着が良い」=「衛生要因(賃金による不満足要因)は取り除けている」とも考えられます。そのため、賃金水準には問題がなく、賃金以外の面でも多くの魅力があるが、それが求職者に伝えられていないという可能性も十分にあるでしょう。
こうした企業様においては、改めて採用活動の在り方を見直すことで、人が採れるようになる可能性を大いに秘めています。以下のサイトでは、中小企業で採用を行うためのノウハウをご覧いただけますので、改めて自社の採用の在り方を見直す際のご参考としていただければ幸いです。
なお、賃金水準も重要要素の1つであることに間違いありません。以下、自社の賃金水準を確認するための方法をいくつか記載します。
①厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」と比較してみる
日本で調査される賃金関連のデータでは、調査母数が最も多い調査であるため、マスデータとしては有効活用できます。「業種別」「役職別」「職種別」「都道府県別」など、様々な切り口のデータがあるため、多面的な比較が可能です。以下がリンクとなります。
賃金構造基本統計調査 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
②各種団体から出ている情報を参照してみる
業界団体や各地域の経営者協会がデータを収集・発表しているケースもあります。よりミクロな比較ができるようなデータがある場合もあるため、取捨選択をしながら使ってみると良いでしょう。(調査母数が少なすぎるもの等は注意が必要)
③転職サイトの情報から相場を確認してみる
中途採用を意識した際には、転職サイトからアナログで情報を集めてみるのは非常に有効です。ターゲットとなりうる地域や職種、あるいは特定の企業など、どのくらいの役職・階層の社員をどれくらいの賃金で募集しているかを調査し、比較してみましょう。
(ベンチマークとする先が明確であれば、より有効度合いが高まります)
労働力人口が減少する中、採用の在り方で企業の競争力に大きな差が出ることが想定されます。改めて、賃金水準の設定や採用方針等、戦略的に行っていく機会としていただければ幸いです。