【森谷】《人事よもやま話》 原則の逆張りをする
ファヨールは、14の管理原則を提唱しました。代表的なものは、下記の通りです。
①権限・責任一致の原則
…権限に対する責任、責任に対する権限は同等であらなければならない
②命令一元化の原則
…指揮命令系統は一つであらなければならない
③統制範囲の原則
…1人で管理できる人数には限界があるため、定量を守るべきである
④権限委譲の原則
…定型的な仕事は下位者に割振り、上位者は非定型の業務に時間を割くべきである
⑤専門家の原則
…専門特化することで習熟が早まり、効果的・効率的な仕事ができる
※筆者が意訳しています。短い文章で表現する為であり、ご了承ください。
効果的・効率的に組織運営を行うにはもっともな原則ばかりですが、敢えて逆に張った場合のメリットを考えてみます。
①権限・責任不一致のススメ
責任を負わない前提で権限を与えると、大胆な取り組みができるかもしれません。多くの会社では「チャレンジ」を推奨していますが、失敗したときのデメリットを考えて動かない社員が多いようですので、このススメは使えそうです。
逆に、権限がない状態で責任のみがあっても、多くの場合あまり上手くいかなさそうです。その場合は、「責任・報酬一致の原則(筆者創作)」とすればよさそうです。
②命令多元化のススメ
若手社員の退職理由で上位にランクインするものの一つが、「上司の理不尽さ」です。立場や人、タイミング等が変われば、意思決定の内容は変わります。
ただそれは、立場や人が変わるからであり、ビジネスでは物事の背景を理解した上で是非を判断していく力が求められます。命令が多元的であれば、社員の考える力や対応力、コミュニケーション力が向上しますので、このススメは使えそうです。
③統制範囲無視のススメ
人には防衛本能があり、無意識に自分自身をセーブしがちです。別の言い方をすれば、「難しい」と「無理」を混同して考えてしまいがちです。
一度、統制範囲を無視して仕事や部下を持たせてみれば、自身の仕事の進め方を改め、効率的・効果的な手法を生むことができるかもしれません。「無理」でも「やるしかない」状況が人を成長させますので、そう言った意味では、このススメも使えそうです。
④業務抱え込みのススメ
誰にでもできる仕事を上位職者が行うことで、より効率的な仕事に変わるかもしれません。が、他業務とのバランスを考えると、やはり上位者はより高度な業務に時間を割くべきでしょう。このススメはやめておいた方がよさそうです。
⑤多能工のススメ
いわずもがな、中小企業では必須のススメです。
中小企業では「1人工(いちにんく)」を必要としない仕事が多くあります。また、専門特化し過ぎると、その社員が離脱したときのリスクが大きくなります。
多能工や兼務は典型的な解決策であり、特に中小企業ではお勧めのススメです。
いかがでしょうか。
VUCAしかり、OODAしかり。
現代の経営は、今までの常識が当てはまらない事象が増えています。
真逆から組織運営や人事制度を考えてみると、答えが見つかるかもしれません。