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【岡本】社員へ成長を促す人事制度設計_OJT制度編

今回は部下育成における『OJT制度』をテーマに、育成への有効性や実施時における指導者が押さえるポイントについてご紹介したいと思います。(OJTは、on-the-job trainingの略で、仕事の現場で実務経験に携わりながら、業務に必要な知識やスキルを学ぶ訓練方法です)

前回のコラムでも述べたように人の成長においては『経験』が重要であると言われています。その考え方の1つとして、『7・2・1の法則』があります。これは人の成長において「学びへ影響する要素として何がどの程度影響するのか」を示した法則です。その内訳をビジネスマンに置き換えると次のように示されます。

 7割 仕事上の経験

 2割 周囲からのフィードバック

 1割 研修受講や自己啓発などのトレーニング

この中でOJT制度は『仕事上の経験』に該当します。また、『周囲からのフィードバック』という点についても、OJT指導過程における上司・先輩からのアドバイスが該当すると考えると、実に9割もの学びへ影響を与える要素をOJT制度は網羅していると言えるでしょう。

 

では、OJT制度が育成において有効な手段であることが分かった上で、実際に制度を運用する中で、指導者が押さえておくと良いポイントについてお伝えします。

まずOJTを実際に運用する際に大切にして頂きたいのが『経験学習』です。成長には経験が重要であることは先ほど述べていますが、単に業務経験を積ませれば良いわけではありません。成長する為には次のような段階が必要だと『コルブの経験学習モデル』では言われています。

 ①具体的な経験:実際に具体的に経験する

 ②省察:経験を多様な観点で振り返る

 ③概念化:自分なりに『持論』を持つ

 ④試行:持論を持って新たな状況に対応する

このサイクルを①⇒②⇒③⇒④⇒①…のように回していくことが、成長に繋がります。そして、このサイクルに沿って指導者が押さえておくと良いポイントを3つご紹介します。

 

①『具体的な経験』の設定

指導者の役割としては部下の成長目標を定め、育成計画を持つことが望ましいでしょう。そして、その過程において、部下の成長に必要となる経験は何かを考え、その経験を積むための機会の設定を行います。この時、部下の能力レベルよりも難易度の少し高い経験の機会・場を意図的に設定することがポイントです。

 

②『省察と概念化』における問いかけ

省察において、部下は自分の経験の振り返りを行います。そして、振り返りの中から自身が得た次につながる学びや教訓について言語化することが概念化となります。この時、部下が業務を通じた経験について振り返り、気づきを整理することが大切ですが、一人で考えるには限界があるのも事実です。そのような場合に指導者から部下の考えを深堀するような問いかけ(『なぜそう思うのか?』『次に何をいかせそうか?』等)を行うことが、部下の省察と概念化の質を高めることに繋がります。

 

③『省察と概念化』についての対話機会の設定

②で記載した部下への問いかけが確実に行えるように、部下と指導者が対話する機会を持つことが重要です。日々の業務に追われ、そのような機会を見過ごしていることも少なくはありません。経験学習サイクルを回すうえで、指導者は部下と対話する時間を意図的に作ることが肝要です。

 

さて、今回はOJT制度について紹介しました。OJT制度は教育において効果が期待できるからこそ、やり方が不十分であれば改善することで更なる部下の成長が期待できます。ご紹介したポイントを踏まえた効果的な指導を自社で行えているかを一度確認してみてはいかがでしょうか。

 

執筆者

岡本 充裕 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、製造業にて経理・採用・制度企画などに7年間従事。組織の抱える悩みや課題を解決する事の難しさを痛感するとともに、組織創りの遣り甲斐を感じた。この経験を活かして、より多くの企業に対して支援をしたい想いから、新経営サービスへ入社。コンサルティングを通して、経営者の『抱える問題を解決する』『夢を叶える』為の力になりたいという熱い想いを胸に、経営者と二人三脚で歩む人事コンサルティングを心掛けている。