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【小田原】定量評価は公平?逆に不公平になるよくあるケース

今回は「定量評価が逆に不公平になるよくあるケース」について述べたいと思います。

 
定量評価とは、数字で測ることのできる評価指標のことです。代表例としては、売上や利益が上げられます。対義語は定性評価であり、評価指標を言語で表現したものとなります。
この定量評価ですが、誰が評価しても同じになるから公平である、と思われがちです。確かに、誰が評価しても同じになるのは間違いないのですが、本来目指すべき公平というのは、 「本人の実力や頑張り=評価」となる評価でしょう。客観性が高いからと言って、無理やり定量評価を設定した結果、この「本人の実力や頑張り=評価」となる構図が逆に崩れて、不公平になってしまうケースがよくあります。

 
最も良くあるのが、「単純に売上や利益を評価指標として使用すること」です。必ずしも売上や利益を評価するのが悪いわけではなく、適切な場合も当然多くある、という点はご留意ください。その上で、ある精肉卸売業を営むA社における営業マンの評価の例をご紹介します。少し特殊な例かもしれませんが、理解が深まるかと思います。

 
まず、前提として、この企業での営業マンに求められる動きとしては「割り振られた担当先のルート営業を中心に行う」という状況でした。そして、弊社がご支援する前は、営業マンの定量評価は、単純に「売上」を評価していました。
しかし、弊社がご支援を進める中で、先ほどの前提も考慮して議論を進めると、売上の評価だけでは不十分だとの判断になりました。その理由としては、「お肉が店頭でよく売れる店の方が、たくさん仕入れてくれる」かつ「お肉が店頭で売れるかどうかは、陳列や販促方法などのお店の努力による部分が大きく、営業マンの実力と必ずしもリンクするわけではない」といった状況であったためです。
そうしたことも踏まえて追加で設けた指標が、「担当顧客における売り場のシェア」です。売上高がどうなるかはお店(小売店)によるところが大きいですが、「その店の中でなるべく自社の商品を扱ってもらう」ということは、営業マンの実力・努力が大きく影響する事項であるため、評価指標として設定して、売上よりも重要度を高めました。

 
以上が精肉卸売業での事例となりますが、適切に定量指標を設定しようとすると、なかなか奥が深いことが分かるかと思います。

 
他にも、「個人での実績値は出せないが、チームでの実績値は出せるため、チーム実績への影響力の少ない若手社員にもチーム実績で評価をする(製造業などでよく見られる)」「担当顧客や地域差などにより、定量目標の難易度が人によって異なる」などにより、逆に不公平になるケースが見られます。
現在設定されている定量評価の指標は、「本人の実力・頑張りが十分影響するのか」という観点で今一度見直してみましょう。

執筆者

小田原 豪司 | 人事戦略研究所 シニアコンサルタント

大学で経営学全般を学ぶなか、特に中小企業の「ヒトの問題」に疑問を感じ、新経営サービスの門をたたく。
企業の「目的達成のための人事制度構築」をモットーに、顧客企業にどっぷり入り込むカタチで人事制度策定を支援している。