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【小田原】「メリハリのある賃金制度」にしたら、逆にメリハリがなくなった?

今回は賃金制度設計時の注意点について考えてみたいと思います。

賃金制度を改定する際、「頑張った人とそうでない人でしっかりと処遇のメリハリを付けたい」という方針で進めることが多くあります。

以下は、上記のような方針で実施されたお客様先での改定事例です(弊社支援前の改定)。

 

     

 

確かに、評価が1つ変わることによる昇給額の差は、2,500円から5,000円とメリハリが大きくなり、方針が実現されているようにも見えます。

 

しかし、実際に運用すると、以下のような評価分布であったとなればどうでしょうか。

(この企業様では絶対評価をベースとした制度運用を行っていました)

 

     

 

賃金のメリハリは大きくなったものの、評価の分布が中心に寄り、結果として賃金のメリハリが以前よりもつかなくなっています。

 

こうした事象が起きる原因としては、「賃金のメリハリ大きくするほど、評価の重みが増し、無難に真ん中をつけておこうという心理が働く」ことがあげられます。

従って、評価者のより高い評価力が必要となり、運用の難易度は上がります。

 

 

上記は絶対評価をベースとした制度運用におけるケースですが、相対評価の制度運用の場合でも気を付けるべき点はあります。

「評価の重みが増す」というのは相対評価であっても変わりありません。機械的な相対化に近づくほど、点数が1点違うだけで昇給額が大きく異なるという事態が起こることを考えると、より評価力が求められるとも言えるかもしれません。

また、相対分布を決定する人事部が「やはり無難に真ん中に大きく寄せた分布にしよう」と考えたならば、以前よりもメリハリがつかないという事象も起きかねません。

 

よって、よりメリハリのついた賃金制度を導入するには、「人事部(人事担当者)のやりきる覚悟」「評価者教育」は必須となります。

 

「メリハリの大きい賃金制度」を導入する際には、必要性・実現可能性は十分に検討した上で、絵に描いた餅にならないよう進めましょう。

執筆者

小田原 豪司 | 人事戦略研究所 シニアコンサルタント

大学で経営学全般を学ぶなか、特に中小企業の「ヒトの問題」に疑問を感じ、新経営サービスの門をたたく。
企業の「目的達成のための人事制度構築」をモットーに、顧客企業にどっぷり入り込むカタチで人事制度策定を支援している。