評価者研修と効果測定の考え方
「評価者研修って、本当に効果があるんでしょうか?」
中小企業の経営者や人事担当者の方と話をしていると、よく出てくる言葉です。
・制度改定のタイミングで評価者研修を実施したものの、結局どのような効果が得られたのかわからない。
・毎年やってはいるが、意味があるのか考えさせられる。
決して珍しい話ではありません。
一方で、研修を企画した側としては、「評価者には必要な内容だ」「やらないよりは良いはずだ」という思いもあります。その結果、研修は定期的に実施しているものの、効果については十分に言語化・可視化されないままになってしまう。こうしたモヤモヤの背景には、評価者研修ならではの効果測定の難しさがあります。
研修効果をどう捉えるか ―代表的な考え方―
効果測定の難しさを整理するために、まずは研修効果をどう捉えるのか、一般的な考え方を確認してみましょう。研修効果の議論でよく知られているのが、カークパトリックモデルに代表される「4段階」での捉え方です。
■反応(受講者の満足度)
■学習(知識やスキルの理解度)
■行動(職場での実践度)
■成果(業績への影響度)
研修の効果を構造的に整理するうえで、よく使われるフレームです。ただし、評価者研修をこの枠組みで見ていくと、少し扱いづらさを感じる場面も出てきます。
評価者研修で、「成果」の効果測定が難しい理由
評価者研修をカークパトリックモデルに当てはめて考えると、「成果」の段階で効果測定に悩むケースが多く見られます。その理由は、大きく二つあります。
一つ目は、研修実施から「成果」に至るまでに時間を要することです。
評価者研修で得た気づきや学びは、まず評価の視点や判断の仕方、部下への向き合い方といった評価者自身の行動に表れます。そのうえで、評価の納得感やフィードバックの質が少しずつ高まり、結果として部下の成長や業績向上といった成果につながっていきます。研修直後に成果が見えることは少なく、一定の時間を経てはじめて影響が表れる性質のものだと言えるでしょう。
二つ目は、「成果」が評価者研修だけの影響として表れないことです。
評価者研修の影響は、評価者の判断の精度や評価の伝え方を通じて部下に及び、さらに業務内容や配置、本人の意欲、組織環境など、さまざまな要因と重なり合いながら形になっていきます。そのため、仮に部下が成長したり、業績が向上したりしたとしても、評価者研修の成果として切り出して捉えることは難しくなります。
このように、評価者研修の成果を直接的に測ることには、構造的な難しさがあります。なお、評価の精度や納得感の向上そのものを「成果」と捉える考え方もあります。ただし本稿では、研修効果を整理する観点から、評価者の理解や行動の変化については成果に至るプロセスとして整理しています。
評価者研修の効果は、何を測れば良いのか
効果という言葉から、つい「成果」を思い浮かべがちですが、評価者研修においては効果を成果だけで測ろうとすると、「測れない」「効果がない」という結論に陥りがちです。そのため、カークパトリックモデルの「反応・学習・行動」にも目を向けることで、研修の手応えや変化をより現実的に捉えることができます。
例えば、次のような指標です。※()内は手段の例を示しています。
■反応
・研修を通じて納得感や気づきが得られているか(研修アンケート)
■学習
・評価制度や評価基準に関する理解が深められているか(確認テスト)
・評価結果の極端な甘辛の偏りが軽減しているか(評価結果の傾向分析)
■行動
・評価コメントに根拠や具体性が見られるか(提出された評価表や評価結果すり合わせの場での発言等)
・部下との面談やコミュニケーションの機会が増えているか(面談管理ツールや評価者のスケジュール等)
これらは、業績のように明確な成果ではありませんが、評価者が少しずつ変わっているかどうかを捉える手がかりになります。
評価者研修の効果をどう活かすか
評価者研修の目的は、公平な評価を通じて、業績向上や人材育成につなげていくことです。ただし、研修のゴールとしては、まず評価者自身が研修を通じて気づきを得て、少しずつ変わっていくことが重要です。
評価者の変化は一度の研修で完結するものではありません。だからこそ、効果測定も「成果が出たかどうか」を判定するためではなく、「次にどんな支援や機会を用意すべきか」を考える材料として捉える方が、有意義ではないでしょうか。
評価者研修の効果について悩んだとき、「測れない=意味がない」と結論づける前に、評価者にどんな変化の兆しが生まれているかを振り返る視点を持つこと。本稿が、そのための考え方を整理する一助になれば幸いです。
