【事例あり】その目標設定は適切か? 部下が立てた目標をチェックしましょう
人事評価指標の一つとして目標管理制度を導入している企業は約65%となっており、幅広く浸透しています(※1)。目標管理制度とは、社員が自ら目標を設定し、達成までのプロセスや進捗を管理する経営手法です。しかし、目標の達成度を給与や賞与に反映させることを前提とする企業では、特に目標設定の難しさに戸惑うことが多いようです。適切な目標設定がされていない状態で目標の達成度を給与や賞与へ反映させると、「目標の達成基準が不明瞭」「目標レベルがバラバラで不公平」といった社員の不満要因につながる恐れがあります。
そのため、部下が立てた目標の内容やレベル感に問題はないかを上司がチェックすることが重要です。本記事では、上司が部下の目標をチェックする際の観点を解説します。
【部下の目標をチェックする際の観点】
目標設定において特に問題が起こりやすい点として、上司がチェックすべき主な観点をご紹介します。
①目標レベルは適切か
目標の達成度を給与や賞与へ反映させる以上、目標レベルは低すぎても高すぎても適切とは言えません。目標は、社員の等級や役職に見合ったレベルになっている必要があります。
NG例:「個人売上○○万円を達成する」
これは課長級の社員が立てた目標ですが、この会社の課長級の等級基準書「自らの経験を活かしながら、課のマネジメントを遂行する」に照らし合わせると、個人成果の目標に留まっており、課のマネジメントを担う立場の目標としてはレベルが十分ではありません。
OK例:「課全体で売上△△万円を達成できるように、営業プロセスの標準化を行う」
等級基準や役職基準を参考に、社員にとってその目標が相応のレベルになっているかを確認し、是正しましょう 。もし目標レベルを上げることが難しい場合は、目標のテーマ自体を見直すことも選択肢の一つです。
②達成基準は適切で具体的か
具体的な達成基準が目標に入っていないと、部下が考える「目標を達成している状態」と上司が考える「目標を達成している状態」にギャップが生まれる恐れがあります。そうなると評価を正しく行えず、評価結果の不満に繋がることがあります。
NG例:「若手社員が定型業務を行えるように指導する」
この文章だけでは、目標が定量的でないこともあり、どのような状態が達成したと言えるのかが分かりにくくなっています。
OK例:「若手社員が定型業務を1時間以内に独力で行えるように指導する」
目標が組織の期待する方向性に沿っており、具体的であるかをチェックしましょう。定量的な達成基準が記載されているか、もしくは定性的な達成基準であっても「どうすれば達成したと言えるのか」が判断できるようになっているかを確認します。判断できない場合はあらかじめ部下と協議しすり合わせておくと良いでしょう。
③目標達成のためのプロセスは明確か
ただ目標を立てるだけでは、あまり意味がありません。目標が形骸化しないよう、 実際に行動できるように達成までの道筋を描けている必要があります。そのため、目標設定時には達成基準だけでなくプロセスも明確にしておくことが重要です。
NG例:「加工作業のミスを〇%減らす」
この文章だけでは、どのように目標を達成するか部下自身がイメージできているのかが分かりません。
OK例:「加工作業のミスを〇%減らす。例えば、これまでのミスを一覧にして毎回指差し確認を行う、~~を行う」
このように、具体的な方法やプロセスが明記されているかをチェックしましょう。目標達成のためのプロセスを部下自身がイメージできており、上司もそのイメージを認識できている状態にしておくことが大切です。
④目標とプロセスは混同していないか
あえてプロセス自体を目標にするケースもありますが、基本的には手段(プロセス)ではなくゴールを目標にする必要があります。
NG例:「品質検査に関する勉強会に△回参加する」
勉強会に参加すること自体が目標となっており、本来目標にしたかったこと(その勉強会を通じてできるようになりたかったこと)が目標に表れていません。
OK例:「先輩のフォロー無しで品質検査ができるようになる。そのために品質検査に関する勉強会に△回参加する」
このように本来目標にしたかったことを目標として設定できているかをチェックしましょう。なおプロセス通りに実行しても(勉強会に参加しても)、目標を達成できない(品質検査ができるようにならない)ことがあります。その際に0点とするのかプロセスも鑑みて標準点とするのかなどは、事前にルールを統一しておく方法が有効です。
ここまで上司が部下の目標をチェックする際の主な観点を4つご紹介しました。目標管理制度の運用にはいくつもの壁がありますが、その中でも目標設定は要注意です。適切に目標を設定できるよう、本記事を活用してみてください。なお、あらかじめ部下に4つの観点に留意して目標を設定するように指導しておくと、より良いでしょう。
※1 株式会社帝国データバンク、2022年3月、中小企業の経営力及び組織に関する調査研究、(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2021FY/000046.pdf)、P.52