人事制度の策定・改定を経営陣にどう提言するか
筆者がご支援してきたクライアントにおいて、人事担当者の方が評価・処遇の決定方法への問題意識を持ち、経営陣に対して人事制度の策定・改定の説得をしたというケースがいくつかあります。しかしながら、経営陣に問題認識を持ってもらうのは必ずしも上手くはいかず、進めるハードルはどうしても高くなる印象があります。
そこで、今回は、経営陣を説得するためにどのようなアプローチが考えられるかをご紹介したいと思います。なお、今回は、「評価・処遇の決まり方が不明瞭で、公正感・納得感がない」という問題意識を人事担当者の方が持っているケースで考えてみたいと思います。
【アプローチ①】アンケートで可視化する
人事担当者の方が、上記のような問題意識を提言しても、経営陣から「それって本当にそうなの?」「そんなこと聞いたことないけど?」と言った反応になることも多くあります。そこで、社員アンケートを実施し、現状を客観的に可視化することも有効となる場合があります。
ただし、アンケートの実施を提案する際には注意が必要です。明確な理由はないものの制度に対して後ろ向きで、上記のような反対理由の投げかけを建て前で行っている場合もあります。この場合、制度の策定・改定に対して感情面からさらに消極的になってしまう、アンケート結果に関わらず結局実施しない、などの可能性もあるため、経営陣の真意には注意を払いながら進める必要があります。(特に、後者は、アンケートを取るだけ取って何もなかった、という社員に対してマイナスの印象を与えることにもなり兼ねない)
【アプローチ②】人事評価表のサンプルを見てもらう
人事制度のない中小企業の経営者の中には、人事制度と言われても、あまりピンとこず、なんとなく悪いイメージを持たれている、というケースもあるという印象です。
こうしたケースでは、「モノ」として分かりやすいため、人事評価表のサンプルをまずは見てもらうというアプローチも有効になり得ます。経営陣の反応次第で、評価制度のみの導入をまずは提案してみるのも良いでしょう。
実際に、筆者の過去のご支援先で、経営者の方が人事制度に全く関心がなかったが、ご担当者の方が弊社のHPにある人事評価表のサンプルを元に、こういうものを作ろうと思うとの旨を経営者の方に話をしたところ、「これは良さそうだ」との反応を得られて、まずは評価制度の策定を進めることが出来た、というケースがありました。
以下は、実際にご覧になったサンプルの一部です。こうしたサンプルは弊社HP(https://jinji.jp/samplesheet/evaluation-list/)よりダウンロードいただけますので、是非、ご活用ください。
【アプローチ③】セミナーに来てもらう
経営陣が関心を持ちそうなキーワードで開催されるセミナーをそれとなく薦めてみるのは1つの方法として考えられます。
例えば、「人材育成」「人件費コントロール」「賃上げ・ベースアップ」などのキーワードは、人事制度への関心が薄い経営陣の方でも、響く可能性があります。弊社で過去に実施したセミナーの具体例を挙げると、「社員が育つ人事評価制度のつくり方」「中堅・中小企業の人件費の不安解消!賃金制度改定の進め方をわかりやすく理解するためのセミナー」などと言ったタイトルのセミナーを実施したことがあります。関心のあるキーワードをきっかけに、セミナーでプロから一通りの情報を聞く中で、人事制度の必要性を感じるという可能性を模索するのも1つでしょう。
ここまで3つのアプローチをご紹介してきましたが、人事制度はあくまで手段の1つです。本当に必要であるかどうか、なぜ必要であるかについては、人事担当者の方ご自身でも十分に検討した上で提言いただく必要があります。実際に、「どのように経営陣に理解してもらって制度を導入するか」と言ったご相談を受けるも、詳細のヒアリングをしていくと、「無理に人事制度を導入しなくても良いのではなかろうか」と筆者が感じるケースもあります。人事制度の必要性については、以下の筆者のブログもご参考ください。
中小企業で評価・賃金制度は必要か | 人事戦略研究所:人事制度改革 (jinji.jp)
必要性があり、かつ、こうしたアプローチを取った場合でも、人事ご担当者様からの提言で経営陣から理解を得られない場合も多いのが実情ではありますが、関心のなかった経営陣が問題意識を持つに至り、導入に至ったケースもあります。少しでも制度改定・策定の可能性を高めたい場合は、参考にしてみてください。