【森谷】中小企業における「ジョブ型人事制度」③
日本の人事制度における等級制度には、大きく3つのパターンがあります。
①職能資格制度…人の能力が評価・報酬の対象。能力が同じなら賃金は同じ。
②職務等級制度…人が遂行する職務が評価・報酬の対象。職務レベルが同じなら賃金は同じ。
③役割等級制度…職務をゆるやかに定義したもの(=役割)が評価・報酬の対象。
【特徴】
・①は人を、②③は仕事を評価・報酬決定の対象としている。
・評価対象の緻密さは、①→③→②の順番で細かくなる。
・ただし、③は統一的な概念はなく、扱う人や企業により内容が異なる(場合によっては、②より細かい場合も)。
ジョブ型の人事制度が流行していますが、多くの場合は②を指していることが多いと思われます。
以降については、ジョブ型人事制度=職務等級制度をベースとした人事制度として記述していきます。
ジョブ型人事制度の特徴としては、下記が挙げられます。
・職務の内容は、職務記述書(ジョブディスクリプション)で規定される。
https://jinji.jp/samplesheet/job-description.php
・職務のレベルにより報酬水準が異なる。
・報酬水準については、市場価値も加味される。
以上を踏まえ、ジョブ型人事制度の問題点を挙げると、下記になろうかと思われます。
■職務記述書を作成・メンテナンス・運用することが非常に煩雑である
・そもそも、日本にその文化がなく、作成するのが難しい。
・織再編等の度にメンテナンスする必要がある。
・社員がその職務(=評価の対象となる仕事)しかしなくなる。 等
■報酬決定において、その測定の難しさがあり、また社員に不公平感が生じやすい
・人事異動により賃金が変わる。
・たまたま配属された部署でキャリア形成を行った結果、社員の賃金水準に差が生じてしまう。
・賃金水準の市場価値を測定するのが難しい。 等
■その他、日本型雇用になじまない
・ゼネラリストが育ちにくい。
・新卒一括採用ではなく、職種別採用に切り替える必要がある。
・キャリア志向が強くなる半面、メンバーシップ志向が低くなる。 等
長々とジョブ型人事制度の問題点を上げましたが、実は筆者はジョブ型人事制度への移行に賛成の立場をとっています。メリットを享受し、デメリットを打ち消すにはどのような仕組みにすべきか。また、それを中小企業で活用するにはどうすべきか、次回以降で述べたいと思います。