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【本阪】ベンチャー/スタートアップ企業はいつから評価・賃金制度が必要?

創業から日が浅く社員が10名未満程度の場合は、必要最低限の賃金制度が定められていて、その他の細部は決められていない、という企業様もあると思います。あるいは評価制度・賃金制度が明確でなくても現時点では問題がない、というご認識の企業様もあるでしょう。

しかし、企業が成長していくと、遅かれ早かれ評価・賃金制度の必要性がでてくると思います。それがいつなのか、企業が成長していくにつれて組織によく起きる2つの現象から考えてみたいと思います。

 

 

現象①:管理スパンの限界

まず、管理スパンの限界があげられます。単純に管理する人数が増えるということは一人(又は数名)の経営者では管理しきれない人数になる、という時期が訪れます。

 

そうすると、業務のマネジメントはもちろんのこと、社員一人一人の働きを見て、公平に処遇決定を都度個別に対応することにも限界が発生するでしょう。何もルールを作らずにいると、どうしても声を上げてくる社員を優遇してしまうこともあるかもしれません。そうした密室かつ、その場の個別対応は、不公平感の温床にもなりかねないとも考えられます。

そのためにも、“わが社は何を基準に社員を評価し、どうやって処遇を決定するか“、という社として皆に示せる共通ルールや仕組みが必要になってきます。

その共通ルール・仕組に従って評価して処遇を決定することで公平性を保つことができますし、ルール・仕組を決めておけば、管理スパンの限界がきたときに経営者自らが全員を評価しなくても、現場のマネジメント層にスタッフの評価は任せていけるのです。

 

 

現象②:多様な社員の増加

もう一つに、教育まで人や時間を避けないことから、育成が必要な新卒採用が難しいことが多く、社会人経験者で今必要なスキルを持つ即戦力の中途採用社員を中心にメンバーを拡大していく形となるでしょう。そうなると、多様な価値観の社員が増えてくるということが考えられます。

 

中途採用社員が抱く仕事や会社のあるべき像の価値観は様々です。それぞれのバックグラウンドを持つ人たちの集まりになるため、仕事のやり方・進め方、評価や処遇決定の常識(だと思っていること)が異なるでしょう。また、何も明確な基準を示されないことに、不安を覚える社員もいるかもしれません。

さらに、創業期メンバーであれば、なぜ事業を立ち上げて何を目指すのか、共通軸となる想いや理念は深く理解しているかもしれませんが、途中参加者が増えるほど、その想いに遠い人も入社してくるかもしれません。

そうした多様な背景をもつ社員を抱えながら、組織がより強固になって成長するためには、会社の大事にしたい価値観や、事業の戦略に紐づいて、求める社員像を示していく必要性が出てきます。そうした方針浸透をさせるには何か手段やツールが必要となるわけですが、評価・賃金制度もその一つの有効な手段になりうるというわけです。

 

以上をまとめると、「管理の目が行き届かなくなる時点、あるいは方針の浸透が必要になった時点」で制度導入を検討することが推奨されると言えます。

なお、制度導入のメリットを社員側から見れば、ルールがあることで公平性が保たれ、何を目指して・何を軸に評価されるか明らかになります。そうしたことから、社員のモチベーションを向上させる施策としても有効でしょう。

 

次回では、ベンチャー/スタートアップ企業が「はじめての評価・賃金制度を作る際の諸注意事項」について解説したいと思います。

執筆者

本阪 恵美 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、農業者・農業法人向け経営支援、新規就農支援・地方創生事業に8年従事。自社事業・官公庁等のプロジェクト企画・マネジメントを行い、農業界における経営力向上支援と担い手創出による産業活性化に向け注力した。業務に携わる中で「組織の制度作りを基軸に、密着した形で中小企業の成長を支援したい」という志を持ち、新経営サービスに入社。企業理念や、経営者の想いを尊重した人事コンサルティングを心がけている。