資格手当の金額はどう決める? 〜「正しさ」より「納得感」がカギ〜
企業の人事制度設計に携わっていると、「資格手当はいくらが妥当でしょうか?」という質問をよく受けます。
その背景には、他社の事例や“相場”が知りたいという思いがあるようです。しかし、私は「資格手当の金額に絶対的な正解はない」と考えています。むしろ、どんな意図で制度を設けるのか、社内でどう納得してもらうかが重要です。
①目的を明確にする
まず大切なのは、「なぜ資格手当を支給するのか」という目的を明確にすることです。
例えば
・資格取得のインセンティブを高めたい
・業務上必要な専門性を明示したい
・資格取得にかかる費用や労力をねぎらいたい
・採用時・対外的に一定のステータスを示したい
など、意図によって金額設定や対象資格の選定も変わってきます。目的が曖昧なまま金額を設定すると、制度が形骸化したり、「なぜこの資格には出るのに、これは出ないのか」といった不満が生じるリスクがあります。
②「相場」は参考程度に
業界や職種ごとに一定の「相場感」は存在します。例えば、同業他社の求人票などを見れば該当資格に対してどの程度の手当が支給されているかを確認できる場合があります。ただし、単純に「他社が1万円だから自社も1万円」とするのは危険です。賃金水準や職務内容、資格の活用度合いなどが異なるため、額面だけを真似しても社内での納得感を得られないケースがあるからです。また、自社が「資格手当を武器に採用を強化したい」のか、「制度は維持するがコストは抑えたい」のかといった戦略的な位置付けでも、当然設計は変わってきます。
③バランスと納得感を意識する
資格手当は「報酬の一部」です。したがって全体の賃金バランスも意識しましょう。例えば、資格手当が大きすぎると、本来の職務や成果への評価が相対的に薄れてしまうこともあります。また、複数資格取得時の加算方法もルール化が必要です。重要なのは、社員が「なるほど、この資格ならこれくらいの手当は妥当だ」と納得できることです。そのためには、資格の「業務上の活用度」「難易度・希少性」「取得・維持のコスト」などを丁寧に整理しておくことが有効です。
④定期的な見直しも忘れずに
資格制度は“作って終わり”ではありません。法改正や資格の市場価値の変化、業務内容の変化などに応じて、定期的な棚卸しと見直しが必要です。意外と放置されがちですが、制度をアップデートすることで社員の納得感も維持できます。
資格手当の金額は「正しい答え」よりも「自社らしさ」と「納得感」が重要です。目的を整理し、社員にきちんと説明できる制度づくりを目指すことが、結局は資格手当を活かす最大のポイントになります。