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もう一つの年収の壁

世間では「年収の壁」問題が話題になっています。

 

 ・100万円超 住民税がかかる

 ・103万円超 所得税がかかる

 ・130万円以上 社会保険料の加入義務が生じる

 (諸条件を満たせば106万円の壁に変わります)

 ※詳細は言及しませんので、気になる方はお調べください

 

特に103万円の壁と130万円の壁については、

上回った場合に手取りが大きく減少するため、

特に非正規雇用の活躍の妨げになっているということで

昔から問題になっていました。

 

これを機に人手不足の改善につながることを期待しつつ、

ここでは別の観点で年収の壁について考えてみたいと思います。

 

単位:千円

部長級

課長級

係長級

非役職

従業員数10人以上

9,394

7,967

6,308

4,665

従業員数1000人以上

12,510

10,027

7,252

5,401

従業員数100-999

9,605

7,549

6,103

4,541

従業員数10-99

7,311

6,151

5,310

4,026

 

 

この表は、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を筆者が

加工して作成したもので、企業規模別×役職別にて年収水準を表しています。

見たままですが、賃金水準において、従業員数10-99人が最も低く、

従業員数1000人以上が最も高くなっています。

 

 

 

もう少し可視化してみます。

 

部長級

課長級

係長級

非役職

従業員数10人以上

128%

130%

119%

116%

従業員数1000人以上

171%

163%

137%

134%

従業員数100-999

131%

123%

115%

113%

従業員数10-99

100%

100%

100%

100%

 

この表では、従業員数10-99人に対する差を百分率で表しています。

特に目を引くのが、部長・課長級のいわゆる管理職における水準で、

100-999名規模については2030%以上高く、1000名以上規模に至っては

60%以上、70%以上高いというのが見て取れます。

どうでしょうか。想像以上じゃないでしょうか。

 

最近、中小企業の人事制度改定をご支援する中で、

管理職の賃金水準の引上げがスコープになることが多くあります。

 

 ・優秀な管理職が転職したり引抜きにあったりする

 ・昔に比べ、明らかに管理職の負担が増えている

 ・管理職になりたくない社員が増えている

 

といった問題が大きくなりつつあるためです。

昨今の賃上げブームの最中、人件費の上昇を抑えるため、

管理職の賃上げを見送ってきたことも一因になっています。

 

昔から、組織には2:8の法則があると言われます。

頭脳となる優秀な20%と、その20%の指示や仕組みの中で動く

普通の80%に分かれる、というものです。

ですが最近は、(完全に個人の肌感覚ですが)頭脳となる役割に求められる

仕事の難度が上がっており、Y世代やZ世代などの問題も相まって、

頭脳となれる人材は20%も存在しません。

個人的には、5%程度じゃないかと考えています。

 

今後ますます、優秀な人材の争奪戦が激化すると予測しています。

企業間の「年収の壁」は、決して小さな問題ではなくなってきています。

貴社の管理職の待遇は、今のままで大丈夫でしょうか。

執筆者

森谷 克也 | 人事戦略研究所 所長

企業の成長を下支えする人事戦略の策定・活用が図れるよう、
経営計画・人事システム・人材育成を一連で考える
人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。
企業支援においては、①企業風土(社風、経営理念など)を大切にすること、
②中期的視点(業界環境、管理者レベル等)を持つこと、
③そして何よりシンプルで分かりやすいことをモットーとしている。