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【本阪】資格に関する報酬と金額を論じる前に②注意点編

*こちらは「資格に関する報酬と金額を論じる前に①目的編」の続きです。

 

前回の①目的編に続き、月給で資格手当を支給する場合の注意すべき点として、いくつか触れておきたいと思います。

 

一つは月給で支給する場合、当然ですが割増賃金計算の基礎額に含まれます。残業時間を考慮せず、「特定の資格手当だけ新設した」となると、思ってもいない人件費増額にならないか注意が必要です。

 

二つには、管理職には資格手当がつかないとしている場合、「特定の資格手当だけ高めに改定した」パターンでは注意が必要です。結局、管理職になったとしても、あまり給与が上がらないようではモチベーションにもつながりませんし、全体的に見てバランスが悪くなってしまいます。

 

三つには、社員が異動する場合はどうするか、という点です。

有資格かつ職務に関わる場合の手当として支給し、職務が変われば手当を無くすということ自体は可能ですが、その金額がもし数万にもなっていればどうでしょうか。

異動を命じられ、年収で何十万も大幅に下がるとなると、社員の納得が得られそうでしょうか。そうなることが分かっていながらも、社員に異動を命じることができそうでしょうか(職種別採用で配置転換なし。あるいは職務によりアップダウンがあることが周知のことなら、問題にはならないかと思います)。

 

四つには、同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)の問題です。正社員とパートタイム・有期雇用者との間の「不合理な待遇差」は、法律で禁止されることとなりました(大企業では20204~、中小企業では20214~)。したがって、正社員に資格手当を支給している場合に、同じ資格を持ち、同じ職務内容を担うパート社員や有期契約社員(定年後再雇用者も含みます)にその手当を全く支給しておらず、基本給や時給にもそうした資格手当相当分が考慮されていないという場合には注意が必要です。

正社員同様に資格手当を支給するか、パート社員であればその手当分を時給に含めるなどの検討が必要になる可能性も踏まえておかなければなりません。

 

補足になりますが、資格取得一時金として導入しようという時の留意点としては「資格を持っていない人」には一時金取得のチャンスがあって、「既に資格を持っている人」は、対象外ということも一つあります。

 

また手当でも一時金でも同じことが言えますが、資格を持っていても何も業務に生かせていない、何も業績に繋がらない場合には、本当にその報酬が必要かを考える必要があると考えられます。本来ならば、資格を持っているだけの人よりも、資格の有無問わずに業務で成果を出す人に報酬を配分できる方が、あるべき姿かもしれません。

 

 

注意点ばかりに的を絞って説明しましたが、資格に対して企業が何等かの報酬を支給すること、支援すること自体は悪いことではありません。社員にとっても“何したらいくら貰える”か、分かりやすい指針でもあります。

業務で成果を出すための過程で資格が必要で、動機づけを図りたいというのであれば、手当や一時金などのインセンティブが有効になることもあるでしょうし、スキルアップを後押ししてくれる会社だと社員が思ってくれることもあるでしょう。

また、採用を強化したい場合、基本給一本よりも“資格手当有”“資格取得支援有”“資格取得一時金有”という条件は金額によらず、求職者にとっては「支援があるんだ」「資格が持てたら優遇してくれるのかも」など、魅力の一つに見えることもあるでしょう。

 

ただし、安易に他社や世間情報を参考に「資格手当だけ」を追加したり、「それらしい相場金額」に合わせて改定したりすることはあまりお勧めできません。

基本給や、その他の手当とのバランスが非常に大切になりますし、社員の配置・異動の実態にも気を配る必要はあるでしょう。

そして「そもそもの支給する目的は何か」「狙いは何か」等を総合的に考えて、資格に関する報酬の一つ一つの必要性の有無や水準を、慎重に検討していくことをお勧めします。

執筆者

本阪 恵美 | 人事戦略研究所 コンサルタント

前職では、農業者・農業法人向け経営支援、新規就農支援・地方創生事業に8年従事。自社事業・官公庁等のプロジェクト企画・マネジメントを行い、農業界における経営力向上支援と担い手創出による産業活性化に向け注力した。業務に携わる中で「組織の制度作りを基軸に、密着した形で中小企業の成長を支援したい」という志を持ち、新経営サービスに入社。企業理念や、経営者の想いを尊重した人事コンサルティングを心がけている。