人事制度が上手くいっていない会社は、人事評価制度が上手くいっていないと言える程、人事諸制度の中でも重要な制度です。
人事評価は、人事制度の中でも非常に重要な役割を持っています。なぜなら、上司や同僚が行った人事評価が、社員の給与改定や賞与支給額、昇進・昇格などの「査定」として使われるからです。
しかし、人事評価制度の持つ役割・目的を「査定」のみにしてしまうと、人事評価制度はうまくいきません。現に過去、ある企業の中間管理職が人事評価をする際、査定を意識してしまい正しい評価ができなかったことがありました。「子供が生まれた部下の評価を悪くして、賞与を下げるといった判断は私にはできない…」というのが理由でした。
社員にアナウンスする際は、「人事評価の目的は人材育成」であることを強調する方がよいでしょう。 そのためにも、①評価項目や評価基準には会社が期待する内容を表現し、②社員が自分自身の現状を把握するためのツールとして活用し、③期待されているレベルに到達できるよう社員の教育・育成につなげていく、ことが、人事評価制度の本当の姿であると言えます。
人事評価制度は、社員の処遇を決める尺度となるだけでなく、社員への期待レベルを表わすとともに、社員の教育・育成指標ともなるべきものです。
そういった観点からも、人事評価表は職種別に作成することをお勧めしています。なぜなら、期待レベルを表すにあたり、より具体的に表現されている方が、社員がイメージしやすいためです。営業職、技術職、事務職といった職種ごとに、例えば「わが社が○○職に期待する成果、行動、スキルは何か」といった議論により評価項目を抽出し、項目ごとの評価基準を設定していきます。
評価する対象は大きく分けて次の2つ、「成果・業績評価」と「職務プロセス評価」です。
全職種共通 | 売上、利益 |
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営業職 | 管理可能利益、チーム売上高、チーム粗利益高、新規開拓売上高、新規開拓件数、新製品売上高、リピート率、売掛金回収率 など |
企画開発職 | 担当開発商品売上高、開発商品粗利益高、開発件数、開発納期遵守率、テーマ達成度、開発コスト実績 など |
販売・店長職 | 担当開発商品売上高、開発商品粗利益高、開発件数、開発納期遵守率、テーマ達成度、開発コスト実績 など |
SE職 | プロジェクト利益高、担当付加価値高、受注高、納期遵守率、納期短縮度、プロジェクト予算削減率 など |
製造職 | 生産高、納期遵守率、労働生産性、仕入れコスト削減率、リードタイム短縮率、製造コスト削減率、不良率 など |
総務・経理職 | 経費予算達成率、採用人員数、社員定着率、資料作成期間短縮度、売掛金回収率 など |
業務遂行・姿勢 | 技能・知識 | |
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営業職 |
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企画開発職 |
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総務・経理職 |
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店長職 |
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これらを組み合わせ、「期待レベルに達したかどうかをチェックできるツール」をイメージして人事評価表を作っていきます。
目標管理制度を導入しているものの、個人目標にバラツキが多く、評価の公平性を欠いている企業は多いものです。そういった会社の特徴として、目標設定の考え方や手順が不明確なことが挙げられます。
逆に、目標管理制度が上手く機能している会社の特徴は、以下のようになります。
経営計画、部門計画がないのに、個人の目標管理だけを機能させることは不可能です。また、目標管理制度は管理職のレベルが如実に表れる制度ですので、管理職に対する徹底した教育や意識づけがカギを握ります。
目標管理制度導入の初期段階としては、部署別・階層別の目標設定事例集などを作成・配布し、「適切な目標とはどのようなものか」を社員にイメージさせることも有効です。これは、過去に設定された個人目標の中から、自分に適切と思われる目標を抽出し、職種や等級ごとに整理することで作成できます。
先の「成果・業績基準」「職務プロセス基準」をしっかり作り込み、目標管理制度を廃止することで人事評価がスムーズになった企業事例も多くあります。人事評価制度の運用状況に合わせ、柔軟な発想で考えることが成功のカギだと言えます。
人事評価の目的が、社員の能力開発や意識づけだとするなら、本人へのフィードバックは欠かせません。評価結果を知らせなければ、現状認識や改善点を理解させることは困難だからです。
ただし、中途半端に実施すると逆効果になることもあるので、注意が必要です。上司の伝え方がまずい場合には、部下の不満となりますし、部下からの質問や反論に対して明確な回答ができなければ、上司への不信にさえつながりかねないためです。
そういった意味でも、フィードバックを実施するためには、上司への教育が不可欠です。そのために有効な手段として、「評価者訓練」があります。
評価者訓練を大きく分けると、「評価トレーニング」と「フィードバック面談トレーニング」に分かれます。
「評価トレーニング」では、実在する特定社員の評価を複数で行ない、食い違う部分をディスカッションしていくスタイルが効果的です。より具体的なかたちで、他の人と評価の目線を合わせることができます。
「フィードバック面談トレーニング」では、ロールプレイング中心の実戦形式が効果的です。様々な評価者のフィードバック面談を見ることで、実際に活用できるテクニックを学ぶことができます。
もちろん、人事評価の目的や、評価者としての心構えを学ぶことは必須となります。一度、外部機関に研修を依頼し、数回実施した後、社内で内製化するのもよいでしょう。
最後に、人事評価の運用ルールを整備します。主なものでは人事評価スケジュールと、評価者の明確化があります。
人事評価スケジュールについて、多くの企業では年2回の人事評価を行っており、以下のようなスケジュールが一般的です。
評価期間 | 評価対象期間 | 評価実施 | 評価フィードバック | 処遇反映 | |
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上期 | 4月~9月 | 10月 | 11月 | 冬期賞与反映(12月) | 6月の昇進試験、 給与改定に反映 |
下期 | 10月~翌3月 | 4月 | 5月 | 夏期賞与反映(6月) |
ただし、決算期や繁忙期を踏まえた上で、柔軟に設定する必要があります。「成果・業績評価が明確になる」「評価実施と賞与支給のタイミングが近い」等の条件をクリアできるようにします。
評価者の明確化については、
等の調整を行い、ルールとして整備します。